「こびとの王ラウリン」はゲルマンの英雄憚「ニーベルンゲンの歌」に出てくるディートリッヒ王に関する独立したサガ(叙事詩)の中に登場します。
「ニーベルンゲンの歌」自体の成立は紀元400〜500年頃、ブルグンド族の滅亡に関する散文で、当時ブルグンド族はライン川沿いのヴォルムスあたりの地域に定住していました(異説もあり)。
ベルンのディードリッヒの歴史上のモデルは、紀元493年にイタリアに東ゴート国を建設したテオデリッヒ大王というのが有力ですが、ディートリッヒ伝説は各地に伝わっており細部が少しずつ違っているようです。
英雄叙事詩の形になるのは1200〜05年頃で、作者は不明。
ワーグナーの歌劇「ニーベルンゲンの指輪」は、この話を元に構成されています。
伝説のラウリンは小人で指尺三つくらいの長さしかなくて魔術の心得があり、チロルの奥深くに住み、金色の縁飾りと宝石、その他の飾り物に覆われて咲く薔薇の庭を所有しています。彼の甲冑は金で出来ていて馬勒は宝石で飾られ、竜の血で固められた鎧はどんな刀も歯が立たず、金色の兜はルビーと石榴石が萌えるように光っていました。また、姿が見えなくなる魔法の頭巾も持っていたようです。
ラウリンは大変な財宝持ちで、岩の扉を通ってたどり着く洞穴には、宝石の灯りで明るく、招かれたディートリッヒ達は、金のベンチに象牙のテーブル、まわりの壁には宝石が輝いて明るくしている広間で最良のワインと蜜酒を銀の食器でご馳走になります。
最初にちょっかいを出したのはディートリッヒですが、ラウリンが欺いたためディートリッヒは家来のヒルデブラントの妹の助力でラウリンを打ち負かし、財宝を自分の所有とします。それ以来こびとたちは、彼らの山で鍛冶の仕事をするようになりました。
ラウリンはディートリッヒの居城へ連れて行かれさらし者にされますが、後に許されて自分の洞窟へ帰り、その後はディートリッヒに誓った忠誠を守り通したということです。
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