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◆リオネス(Lyonesse)

リオネスはコーンウォール州西部の港湾都市、ペンザンス沖にかつて存在したとされる伝説の島です。

現在のシリー諸島は、水没を免れたリオネスの一部であるという言い伝えがあります。
1586年に、英国の地理学者ウィリアム・カムデンが、セント・マイケルズ・マウントと、シリー諸島の間にリオネスが位置していたと言ったのが最初のようです。

1602年に、クロニクル・ニュースのジャーナリストであったスタンリー男爵がランズエンドの北のセンネン入り江(sennen)で、水中から教会の鐘の音を聞き、また、ウィルトンの元市長イーディス.オリヴァーは、ランズエンドの崖から波の下に塔、ドーム、尖塔などを2回見たことがあると主張しました。

水没の原因は、津波に飲み込まれたという説もありますが、実際には長い時間をかけて徐々に沈んでいったものと思われます。ローマ時代のシリー諸島は大きな一つの島だったようですが、徐々に中央部が海底に沈み、現在のシリー諸島だけが水没を逃れたといわれています。実際に、海底には遺跡も存在しています。

アーサー王伝説では、トリスタンの故郷がリオネスとされています。

1099年11月11日に大きな嵐で津波が起こり、生き残ったのはトレヴェリアンという男一人であったという。

イスの伝説(Ys, Is)

ブルターニュ半島にも、リオネスに似た沈んだ都市の伝説があります。

アルモリカ(ブルターニュの古名)のグランドロン王が、海が好きだと言う娘ダユー(ダヒュ)のために、海位よりも低い場所に、堤防に囲まれたイスの町を建てさせました。教会の尖塔や城の櫓が林立する美しい町で、パリがその名を決める時に「イスのような町(Par-Is)」とした程だったといいます。「イスが波間から浮かび上がる時、パリは沈むだろう」という言い伝えもあるそうです。

ある時、ダユーの前に美しい青年の姿をした悪魔が現れ、彼女が青年に夢中になると、彼は愛の証として町の城壁の水門の鍵を要求しました。ダユーは父王が眠っている隙に水門の鍵を持ち出し、悪魔に渡してしまいます。悪魔が水門の鍵をあけると、波が町に押し寄せてきました。
グランドロン王はダユーを馬の後ろに乗せて全速力で逃げ出しますが、波に追いつかれそうになってしまった時、天から「助かりたいと思うのなら、お前の後ろにいる悪魔を突き落とせ」という声が聞こえました。王は泣く泣く声に従うと、波はダユーを飲み込んで引いてゆき、王は脱出することが出来ました。
王はその後、隠修士となって森の中で余生を送ったとも、カンペールに新しい都を築いたとも言われていますが、ダユーの方は、セイレーン(半人半魚の魔女)となって、今でもその美しい姿と歌声に魅せられた人たちを海中に引きずり込んでいるということです。

ダユーはグランドロン王と妖精の間に生まれた娘であり、また、ダユーを魅了した悪魔は、ダユーとイスの町の人たちが快楽に身をまかせて罪にまみれたため、神が罰として送ったという説もあります。

この近辺には、漁師が海の下で教会の鐘が鳴っているのを聞いたとか、晴れた日に明るく澄んだ海の底に、城塔が立ち並ぶ大きな町が見えたとか、イスで使われていた豪華な調度品が釣り糸に引っかかってきた、引き潮で海位がどんどん低くなり、船底が海底についてしまい、周りを見回したらそこはイス郊外のそらまめ畑だった等、イスに関する様々な言い伝えが残っています。

また、水没した町が浮かび上がってきたという伝説もあるようです。 ある日、食事の準備をしようと海水を汲むために浜に降りていった女性の目の前に、突然広大な柱廊が現れました。彼女がその中へ入っていくと、すばらしい品々が並ぶ商店街がありました。店の主人は皆口々に、「何でもいいから、何か買ってくれ」と呼びかけますが、彼女はお金を持っていませんでした。そのことをある店の主人に言うと、彼は「それは本当に残念です。もしあなたがどんなものでも1つでいいから買ってくれさえすれば、私たちはみな救われたのに」と答え、そのとたんに美しい町は再び沈んでしまい、彼女は気を失って浜辺に倒れていたそうです。

シザン半島の先にある、ラ岬とヴァン岬のあいだの「死者の海」にイスの町があったとされています。伝説の元になったのは、五世紀頃ブルターニュ最端部を襲った高潮のようで、実際、この辺りの海底には古い港の遺構がいくつも沈んでいるということです。
死者の海とドゥアルヌネ湾内に、イスに該当する遺跡を探したこともあったようです。