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◆世界樹の木(ユグドラシル)

世界の中心に生えているという、とりねこの大木。「ユグドラシル(イッグドラジール)」とは古代スカンジナヴィアの詩人の言葉で「おそるべき神(=オーディン)の馬」という意味であり、オーディンの馬がこの樹の繁みに現れる習慣があるからだと言われています。ユグドラシルは聖なる場所で、アースの神は協議のために集う場所でもあったようです。
また、オーディンは、この木に9日9晩のあいだ食を断ち逆さに吊られることで、ルーンの文字を習得したと言われています。

この樹のもっとも高い枝には金色に輝く一羽の雄鶏が住みついていて、地平線の果てを見守り、とりねこの枝には一羽の賢い鷲が陣取っていて、神々の旧敵である巨人たちが攻撃の準備を始めるとそれを神々に知らせました。鷲の目と目の間には「嵐の中を音をたてて駆け回る者」という威名を持つ大鷹が構えていて、天候を采配しています。
ヤギのハイドルーンは世界樹の葉を食み、このヤギが出す乳でオーディンの戦士たちは養われていたと言われます。

世界樹の木の根は3つの世界にまで伸びていて、それぞれの根本には泉が涌いていました。
ニフルハイムにのびた根の下には、多くの蛇や「ニドホック(怒り狂って切りさいなむ者)」と呼ばれる竜が巣くっていて、世界樹の根っこをかじっています。根の傍らには太初の河の源であるヒウェールゲルミール(フウェルグヘイミル(沸き立つ釜))と呼ばれる泉が湧いています。

霜の巨人たちの所へのびた根には、ミーミルの泉が湧いていました。この泉はミーミルという男に守られていましたが、この男は知恵の塊のような者で、彼が大事にしている泉の中には思慮分別と明敏な洞察力が納まっていました。
アースの神とヴァーヌの神がもめたとき、オーディンはミーミルに知恵を授けてくれるこの泉の水を飲ませてくれるように頼みますが、ミーミルは泉の水と引き換えにオーディンの片方の目を要求します。この時以来、オーディンは片目となってしまうのです。
ミーミルはアースの警備をつかさどっていた神ヘイムダルのためにとっておいたギャラルホルン(大きな音を出す角笛)で、泉の水をすくって飲んでいました。この角笛は世界に危機が迫ったときにヘイムダルが取り出して、高らかに吹き鳴らすといわれています。

ミッドガルドにのびている根の下(大空にのびていると言う伝承もある)には、運命の女神ウルドの泉が湧いています。ここには運命を司る「ノルンの処女」と呼ばれる3人の女神が住んでいて、一番知恵があるとされているウルドは過去を、ヴェルダンディは現在を、そしてスクルドは未来を司っていると言われています。彼女たちは毎日泉から水を汲んできて、とりねこの樹が枯れてしまわないように泉の水を樹にかけています。ウルドの泉の水はとても神聖で、その水を浴びた者は卵の殻の内側のように白くなります。蜜蜂は泉の水から養分をとっていたので、蜜蜂の露とも呼ばれたようです。ウルドの泉に住む2羽の白鳥もその水を飲んでいました。