女神ダナーの一人娘で、「銀の車輪」という意味。
ウェールズ人が「カエール・アリアンロッド(アリアンロッドの城)」と呼んでいた北のかんむり座の星座の守護神です。
車輪はケルト人が「再生の象徴」として好んで使用する図柄で、太陽を現しています。銀色の車輪(=銀色の太陽)とは、月のことだという説もあります。
ウェールズの神話「マビノギ(マビノギオン)」によれば、アリアンロッドはグイデオンの妻(正確には妻ではないが)となり、スレイ(またはトルウ)という名のアイルランドのルーグと同一神を産むことになります。
【〜マビノギより〜】
マソンウィの息子マスは北ウェールズのグウィンネッズの領主で、戦いの時を除いて彼はいつも乙女(しかも処女)の膝の上に足をのせていなければなりませんでした。
その当時彼の足を支えていた処女はゴーウィンという美しい娘でした。マスの妹の息子ギルヴェイスウィ(ダナーの息子)は彼女に首ったけでしたが、マスはその事を知りませんでした。ギルヴェイスウィは弟のグィデオンにそのことをうち明けると、グィデオンは南ウェールズの領主プウィールの息子プラデリとマスとの間に、魔法と詐術を使って戦いを起こしてしまいます。
マスが戦で不在の間にギルヴェイスウィはゴーウィンの処女を強引に奪ってしまいました。帰還後その事を知ると、マスは怒って甥たち2人を魔法の杖で打ち、牡鹿と牝アカシカに変えてしまい、彼らは最初の年は牡鹿と牝アカシカ、次の年はイノシシと野豚、3年目には狼となり、ようやく人間の姿に戻ることが出来ました。
マスがゴーウィンの代わりの処女を捜していると、グイデオンは自分の妹のアリアンロッドが良いだろうと言いました。そこで彼女が処女かどうかを調べるために魔法の杖をまたがせると、金髪の男の子と何かが落ちました。グィデオンは落ちたものをひろい、箱の中に隠しましたが、それは2番目の男の子に代わりました。最初の子は「ディラン・エイル・ドン(波の息子ディラン)」として知られるようになります。
(2人の男の子はグィデオンが魔法で産ませたものだったため)アリアンロッドは怒りと恥とで2番目の息子に、「自分が与える(あるいは同意する)までは彼は名前を持つことがない」という呪いの言葉を投げかけますが、グィデオンは魔法でアリアンロッドをだまして、「スレイ・ラウ・ガフェス(またはトルウ・トラウ・ギーフェス:巧みな腕をもつ輝く者)」という名前を付けさせてしまいます。
次に「自分がつけてやるまでは、武具を装備することがない」という呪いをかけますが、それもグィデオンの策略によってスレイを武装させてしまいます。
「彼は決して人間の妻を持つことはない」というアリアンロッドがかけた呪いも、グィデオンによって破られてしまいます。グィデオンはマスと一緒に呪文を唱え、オークとエニシダとシモツケソウの花からスレイの妻を呼びだし、ブロデイウェズ(見かけの花)と名付けました。
ブロデイウェズは美しい女性でしたが、愛人のグローヌ・ペパーと一緒になって、スレイを殺すことをたくらみます。スレイを殺すことが出来るのは、作業が禁じられているときに作られた槍だけで、その事をブロデイウェズはスレイから聞き出すのです。
スレイが攻撃可能な唯一の体勢になったとき、隠れていたグローヌ・ペパーが槍を投げつけますが、スレイは死なずに鷲の姿になって逃げ、オークの木に隠れます。グィデオンは彼を捜し出し歌で誘って木から降りてこさせ、人間の姿に戻しました。スレイは他の全ての鳥たちからのけものにされ、ひとりぼっちで夜中に餌を探すように、ブロデイウェズをフクロウに変えてしまい、グローヌは殺してしまいました。
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