トゥアザー・デ・ダナーン<女神ダナーの一族>は、「ミレシウスの息子たち(ミレー族。アイルランド人の祖先のゲール人。彼らは実際はスペイン から来た人々だと思われる)」との戦に敗れますが、その後も魔法の力を保持し、エリンに住む人々からミルクや穀物を奪っていました。
困った人々は国土を2分し、下半分をデ・ダナーンに、上半分をゲール人のものとする妥協案を出しました。こうしてトゥアザー・デ・ダナーンは地下に退き、ダグデ(ダグザ) は各首長にシー(Sidhe)、すなわち「妖精の塚」を割り当てました。このような塚は今でも妖精の住みかと見なされています。
地下に住むようになったトゥアザー・デ・ダナーン<女神ダナーの種族>の生き残りたちは、目に見えない存在となり「アエース・シデー(塚の一族)」という呼び名で呼ばれるようになります。そしてアイルランドの人々は、目に見えない妖精たちの世界を「シデー(ゲール語で丘、土塚という意味)」または「シー(丘に住む人という意 味)」と呼ぶのです。「バンシー」の出現は死の兆しと言われますが、バンシーとはもともと「ベアン・シデー(妖精の女)」という意味でした。
アイルランドの民話や伝説では、妖精の住みかは山の中や森などにありますが、中でも「中が空洞になっている丘(ホロー・ヒル)」に住んでいる妖精は、死者の霊だと思われていたようです。「空っぽの丘」は古墳や塚を指しているからだと思われます。
また、満月の晩に妖精の丘のまわりを9回歩き回ると、妖精の住みかの入り口を見つけることが出来るといわれています。
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