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◆ルーン(Runes)

 

1. ルーン文字について
ルーン文字は紀元前400年から800年頃ゲルマン人の共通の文字として出現し、後にスカンディナヴィアを中心に発達していきました。最初は「フルサク※」と呼ばれる24文字のアルファベットでしたが、紀元850年頃に16文字に減少してしまいます(理由は不明)。

※フルサクとは、ルーンの並び順で最初の6文字「f u p<th> a r k」からその呼び名がついた。

現在残されているルーン文字は、ヴァイキングが刻んだ碑文がほとんどです。
ルーンは細身の短剣、ナイフなど先の尖った鋭利な刃物で木、革、金属、骨などの堅い素材に刻まれましたが、今日までその形をとどめている物はほとんどが碑文であり、長文のルーンは存在していません。ルーンは当時の知識人(高貴な者たち=セイズコナ?)のものであり、表現方法はしばしば秘儀的な性格を帯びていましたが、現在見ることが出来るルーンの表す内容は、所有のしるしや故人を追悼する定型表現が多いようです。
例えばデンマークのゲルレウにある碑文は、オージンスカルという人物を追悼する言葉「汝の墓を大いに楽しみたまえ」と刻まれ、デンマークのトリュグヴェレにある碑文には「彼ほど名家に生まれた者は希である」と、家族によって死者がたたえられる内容が刻まれています。
たいていは自分の尾に噛みついている図柄の蛇の身体に書かれたり、装飾文様や神話・伝説の一部が描かれたまわりに刻まれていることが多いようです。

各文字はそれぞれ意味を持っており、神を象徴するものなどもありました。(下記のチュールを表すルーンなど) 石碑に刻まれたルーン文字は「呪文」や「まじないの言葉」ではなく、単なる文字(アルファベット)として使用されていますが、呪術的な目的でも使用されたようです。


ハルベラ

「この印を見たことがあるかい?」

アリアン

「たしかソリルの剣の先に刻んであったような…」

ハルベラ

「刻んであるのです!なぜならばこれはチュールを表すルーンだから」

(5巻146ページ)

アリアンとハルベラの会話にもあるように、ルーン文字で何かの「呪文」を刻むのではなく、刻まれる物の能力を高められるように、高める能力にふさわしい意味を持ったルーン文字を選び、護符のような意味合いで刻まれたようです。実際、剣や盾にはこのようなルーンが刻まれたものも出土しているようです。

婆さま

「人間の使うルーンなぞ赤子の戯れ言よ 竜には通じまい」

(5巻197ページ)

白アールヴのエルルーンや、ミズガルズの蛇とレギオンは「ルーン」で話をしていることから、婆様が教えたルーンとは「いにしえの神々の使っていた言葉」という設定になっているようです。

2. ルーンのはじまり(神話におけるルーン)

エッダによると、ルーンを最初に習得(発見)したのは、オーディンだということです。
オーディンは戦いの神であるだけでなく、知恵の神、詩の神であり魔術に長けた神でもありました。オーディンはルーンを用いて疾患を癒したり、敵の武器を無力なものにしたり、また捕われた者の鎖を断ち切ることもできました。波を起こしたり静めたり、死者に話をさせたり、女たちの愛を獲得することもできました。
オーディンはルーン文字を自らの身を樹に逆さ釣りにして、習得したと言われています。その時の様子を自らこう語っています。「九夜のあいだ、我が槍に傷つき、オーディンへの犠牲となり、我とわが身を己へ捧げて、私は風に揺らぐあの樹(世界樹ユグドラシルを指す)に、人々がその根のいかなるものとも知らぬあの力強い樹に吊されよう」

また、オーディンが自分が選んで育てさせた人間の里子ゲイルロード王に、広間の二つの火の間に八日間座らせられ拷問にかけられたあと、グリムニルと名前を変えて語った話によると、
「私が世界樹のとりねこに登ってそこに自分の身体を吊したとき、またオーディンがわが身を捧げたとき、私が槍で傷ついて私の血が地面に滴り落ちたとき、誰もこの私に八日の間パンも角杯も差し出してはくれず、棒ダラのように干からびてしまったときに私が自らに加えた苦痛に比べたら、1人の女のための苦しみ等というのは誠に比べものにならない。しかし九日目にしたからルーンの文字が差し出された。私はそれを掴もうと手を出して、それらを悲しい声をあげながら拾い上げたが、再び地面に逃げて落ちた。今ではこの暗示をよく理解できる。そして誕生のルーン文字、ビールのルーン文字、眠りのルーン文字を覚えた。私の母の兄弟である、賢いミーミルから九つの呪文を学んだ。私は成長し身長も大きくなった。私のような奴が必要とする全ての経験を身につけた。そして命のルーン、不幸のルーン、勝利のルーンと死のルーンを覚えた。火が私のそばで八日目に焼け落ちた。その瞬間までそのような行為が引き続きなされた。今や九日目が始まるのである。」

また、エッダには神々の持ち物や、神々自身にもルーンが刻まれているという記述があります。

オーディンの槍グングニルの先にルーンが刻まれている。

ブラギの舌にはルーンの文字が刻まれている。

ミーミルが頭を打ち落とされたとき、雑草の汁をすり込み魔除けのルーンの文字を額にさすり付けて頭に呪いをかけると、腐ることなく彼の賢さは保たれオーディンの質問に答えて、秘密を暴く事が出来た。

豪華な宴席を設けようとしたとき、ビールが足りないので、神々は小枝にルーンの文字を刻んで、それらを運命を占う杖として投げた。杖は神々に大きな醸造釜を持っているエギル(海:アギールのこと)のところへ行くように、という結果を出した。

ところで、エラータはどこでルーンを学んだのでしょうか?
アイルランドは長い歴史の中でも、しばしばヴァイキングの襲撃を受けていましたから、ヴァイキングたちが使用していた文字が伝わること自体は、不思議なことではありませんが…。
やはり、「黒い魔法」に手を染めた時?