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水晶竜の巻

17.ディートリッヒが自分の国を奪回する

主な登場人物

ハドゥブラントはベルンの町の有力者を集め、ディートリッヒ王がアーメルング族の国に来られ、自分の国の返還を要求していることを告げ、ディートリッヒとジフカのどちらを主君として仰ぐのか尋ねた。多くの者がジフカの手に身を預けるくらいならディートリッヒと運命を共にすると言った。ハドゥブラントは、ディートリッヒの供をしてきたヒルデブラントが自分の父であることを告げ、翌日ディートリッヒを迎えに五百人の兵士を連れてルートヴィッヒの町近くの森まで迎えに行き、一緒にベルンへと伴った。

ハドゥブラントは「エルムリッヒは死後自分にこの地を納めるよう言われたが、ずっとジフカに支配されることを拒んできた。今、この指輪と共に私自身と私の兵士、ベルンの町とアーメルングの国全てをあなたにお返しします」と言って指輪を外した。ディートリッヒは感謝してその言葉に報いることを約束した。その後民会を開きジフカを遙かにしのぐ兵力を集め、ジフカの手からアーメルングを取り戻す事を布告した。民会に集まった者たちは王の言葉に拍手し、ジフカに屈するよりはアーメルング族の王と運命を共にすると大声を上げて叫んだ。

ディートリッヒはジフカの軍勢に向かって軍隊を進め、一時はローマからの応援部隊に背後から急襲されたが、ハドゥブラントはものすごい勢いでつっこんでいきジフカと激しく斬り合い、ついにジフカをまっぷたつに引き裂いた。アーメルングのすごい勝ち鬨の声で司令官が殺された事を知ったジフカの軍勢は降伏し、多くの者はディートリッヒの配下となった。

ローマへ入ったディートリッヒは王の間でアーメルング族の戴冠式を行い、エルムリッヒの王冠をいただいた。この後ディートリッヒはローマの地を治めたが、その統治は公正で威信があったので長く平和が続いた。ハドゥブラント公爵はその国の北部の支配者となり、ヒルデブラントは公爵の位を賜り生涯ディートリッヒの元を離れることはなかった。しばらくしてヒルデブラントは病にかかり、息子のことを託して亡くなった。ディートリッヒの妻ヘルラートも程なくこの世を去った。

ジフカの死を聞いたハイメは略奪をしていた巨人たちを討ち取って名をあげ、再びディートリッヒに召し抱えられたが、再び租税を拒む巨人を討ちに行ったとき欺かれて命を落としてしまった。その知らせを聞いたディートリッヒは巨人に向かって戦いを挑み、素早い動きで両手を切り落とし大けがを負わせた。

この頃になるとディートリッヒもさすがに老いてきたが、まだまだ衰えを見せることはなく、ある時猟で見たこともないような立派な鹿にであい、そいつを追うのだといって聞かず、愛馬の準備が出来る前に脇にいた黒い馬に飛び乗って駆けていってしまった。その馬はファルケも及ばないほどの駿馬で、「王よ、何時になったらお戻りになるのですか?」という従者の問いに「それは神のみぞ知る、だ」と答え、その後彼がどうなったのか知る者はいないということである。

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