紫堂トップページ

古代史研究室へ

水晶竜の巻

10.ジフカがエルムリッヒの息子を死に追いやる

主な登場人物

エルムリッヒの支配は、今日アルペンと呼ばれる大きな山々からアドリア海まで広がっており、この地方で一番の権力を持つ王であったが、彼の支配に抵抗する者たちもいた。
エルムリッヒの領地拡大の為に力を尽くしてくれた顧問官はジフカといい、彼にはオディリアという美しい妻がいた。エルムリッヒはこの美しい妻と一度でも添い寝したいと思い、請願書を持たせてジフカを遠方へと使わし、その間にオディリアと一晩を共にしてしまった。(オディリアが王を進んで受け入れたのか、激しく抵抗したのかはわからない)

ジフカが帰ってきたとき、オディリアは目に涙をためて彼を迎え、王が自分にしたことを訴えた。ジフカは妻に「王が決して堪え忍ぶことが出来ないような方法で復讐してやる」と請け合い、以前と変わらぬ様子で王に話しかけた。「あなた様は一番の権力を持つ王でいらっしゃいます。もし貢ぎ物を拒むような領主があれば、それは叛意を示すのと同じです」。

ジフカは貢ぎ物を納めていないヴィルツェンの取り立てに、王の息子を使者として使いに出すことを提案し、公爵がそれでも拒否するなら軍隊で攻撃を加えると伝えるといいだろうと忠告した。王はその言葉通りに息子のフリードリッヒを使いに出したが、ヴィルツェン国の国境の手前の城に着いたときに、ジフカと兄弟の誓いをたてた城の城主は、あらかじめジフカから連絡を受けていたのでフリードリッヒとお付きの兵士を殺してしまった。

2人目の息子レギンバルトはジフカによって船で別の領主に貢ぎ物の取り立てをするために使いに出された。「この船に乗る者は非常に麗しく晴れやかな気分であることが必要なのです」とジフカは一番劣った船を示した。レギンバルトはその船で出航したが、嵐にあって船もろとも海に沈んでしまった。

一番下のザムソンは王自ら手を下すようにジフカは謀った。三人で狩猟に出たとき、ジフカは不機嫌な様子で王の隣に並んで馬に乗っていたので、王は機嫌が悪い理由をジフカに尋ねるた。「ザムソン王子が私の娘に不意に襲いかかって来たのだ。娘がかわいいという事に罪はないが、父であるあなたは自分の息子を処罰すべきだ」
王は息子に弁明の機会を与えずザムソンの髪を掴んで引っ張ったため、彼は不意を付かれて落馬し、エルムリッヒ王の乗馬が息子を踏んづけて殺してしまった。

<<Back | Next>>