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水晶竜の巻

5.ディートリッヒとヴィテゲの一騎打ち

主な登場人物

ベルンに着いた一行はディートリッヒから歓待されるが、ヴィテゲがディートリッヒに挑みに来たと言うとディートリッヒは「どこの馬ともしれない者が自分に決闘を申し込むなど」と一蹴する。ヒルデブラントはそのような言い方は失礼であろうと、ディートリッヒをたしなめた。

ベルン郊外の試合場で決闘は行われることになり、人々は試合場へ移動した。試合の前にハイメはディートリッヒの勝利を祝って乾杯したので、ヒルデブラントもヴィテゲに杯を渡したが、ヴィテゲはその杯で自分より先にディートリッヒに飲んで欲しいと頼んだ。ディートリッヒは怒って杯を突き返したが、ヒルデブラントはヴィテゲは身分が知れない者ではなく、立派な勇者であると言ってディートリッヒを咎めた。ヴィテゲはヒルデブラントの力添えに感謝し、金の指輪を贈った。

試合が始まったが勝負はなかなかつかず、ヴィテゲのうち下ろした刀がディートリッヒの兜ヒルデグリムに当たって折れてしまった。ヴィテゲは父ヴィーラントの腕前に腹を立てたが、ディートリッヒは容赦なくナーゲリングでヴィテゲの首を落とそうとしていたので、ヒルデブラントがその辺で和解して、勇敢なヴィテゲを家来にするように、と助言する。しかし、ディートリッヒは「身分の卑しい者が二度と自分に挑むようなことがないよう、見せしめにする」と言ってベルンの郊外へ放り出すよう命令してしまった。ヒルデブラントがどうなだめようとも、ディートリッヒががんとして部下にすることを聞き入れないので、ヒルデブラントはこっそり交換していたヴィーラントの作った刀ミームングをヴィテゲに渡し、しっかり戦うよう励ます。

折れた刀が父の作ではないと知り、ヴィテゲは父に腹を立てたことを詫びて、再びディートリッヒに向かっていった。今度はディートリッヒは守ることに精一杯で、しかも傷を5つ作り血が流れ出していた。このままでは負けてしまうと感じたディートリッヒは、ヒルデブラントに助けを乞うが自分の忠告を受け入れなかったからだ、と言われてしまう。

そこへディートマル王が割ってきて、ヴィテゲに「この場を納めてくれたなら街を一つ与え男爵の地位と高貴な美しい妻も与えよう」と提案するが、ヴィテゲは「ディートリッヒが自分にしたように、試合のルールは守るべきである」と主張し、ディートマル王もその言葉を尊重して仕方なく脇へ寄った。

このままでは主君が殺されてしまうと、ヒルデブラントはあわてて「自分との兄弟のちぎりに免じて和解し、自分たちの仲間になって欲しい」と頼む。ヴィテゲは「ディートリッヒの命などどうでもよいが、俺達の兄弟の契りというのなら」と態度を和らげ、ディートリッヒとヴィテゲはしぶしぶ剣友の契りと握手をし、皆は揃ってベルンへ戻っていった。

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