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水晶竜の巻

15.ディートリッヒの帰国

主な登場人物

女王ヘルヒェの死後、エッツェルは彼女の忠告に逆らってブルグンドの王家の出である未亡人、クリームヒルトを後添えにもらった。ブルグンド族との戦いで部下を失い、その後親しくなったブルグンドの王グンター、ゲルノート、ギーゼルヘア、そしてトロニィエのハーゲン、辺境伯リューデガーまでもがこの世を去っていた。
ディートリッヒは、ただ1人残ったヒルデブラントに「随分長いこと自分の国を離れてしまったことだ。我々は十分フン族のために戦った。ここで老いて死ぬよりは自分の国のために倒れて死にたい」ともらすと、ヒルデブラントも「未だエルムリッヒが権勢を誇っておりますが、ここで不名誉な死を待つよりも彼との戦で命を失う方がましです」と同意した。そして彼は自分にはハドゥブラントという息子がおり、ベルンの公爵になっていることを告げた。

(ディートリッヒはブルグンドとの戦いで、命を落としたという説もあるらしく、生き延びたと言う前提で話を進める)

ディートリッヒは旅支度を調えエッツェル王に別れを告げに行ったが、既に夜であったので王は寝室で休んでいた。ディートリッヒは武装したまま寝室へ入ることを許されたので、寝ている王を起こした。目が覚めたエッツェル王は、目の前に武装したディートリッヒが1人で立っているのを見て不思議に思った。ディートリッヒはヒルデブラントと2人で人目に付かないよう自分の国へ帰るのだと言うと、王はフン族の兵士をつけようと言ってくれたがディートリッヒは丁重に断った。

エッツェルは城門までディートリッヒを送り2人は別れの挨拶をしたが、エッツエルは二人が名誉ある形で去ることが出来なかった事を気にした。彼らははドナウ川沿いにベッヒラーレンの町を通り抜けて行ったが、城を後にする前に今は無き辺境伯リューデガーに思いを馳せた。
ヒルデブラントも一緒についてきた妻のヘルラートもリューデガーがエッツェル王の広間で宿敵ハーゲンに上等の盾を手渡している様子などを思い出して彼を褒め称えた。一行は昼間は森に留まり夜道を進んでいったが、彼らが移動していることが、昔ディートリッヒの祖父に殺害されたエルズングの後裔であるエルズング公爵の耳に届いてしまい、公爵はディートリッヒを討つべく進撃を開始した。ヘルラートはとうてい適わないからと止めたが、2人は隠れて身の安全を図るより戦う道を選んだのである。

エルズング公爵は美しいヘルラートを見て彼女と引き替えに身の安全を図ってやろうと言ったが、ヒルデブラントは嘲ってその要求を拒んだ。ディートリッヒ達はエルズングの者と戦ったが、公爵の部下達は自分たちの相手が並々ならぬ強者であることを感じ、恐れをなして逃げ出してしまった。公爵も地面に叩き倒され武器を要求されたが、自分が白い髭の老人にこのような負けをしたことに動揺して、その要求を呑んだ。

ディートリッヒは公爵に南の方から自分に関する情報があったら教えて欲しい、そうすれば武器も命も取らない、と言うと「エルムリッヒの身体は腫れてむくみ、傷口も開いていて、ジフカがそれを切り裂いて脂肪を取り出すよう指示したがうまくいかず、ますます悪化したと言うことだが、彼がまだ生きているかは自分にはわからない」と教えてくれた。

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