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水晶竜の巻

6.エッケとファゾルト

主な登場人物

ディートリッヒの傷は治ったが、ヴィテゲに負けたことは彼の心に傷を作った。ディートリッヒは功績を上げるため、ヴィテゲだけにその事を告げて1人で旅に出た。

ある大きな森にエッケとファゾルトという巨人の兄弟がいることを耳にし、彼らに出会わないよう森を抜けようと思ったが、運悪くエッケに出会ってしまった。ディートリッヒはエッケに「自分はハイメシュダソーンである」と名乗るが、ベルンのディートリッヒであることを見抜かれてしまい、巨人に「自分と戦ってヴィテゲとの一騎打ちで負けた名誉を挽回しないか」と言われるが、ディートリッヒはエッケが年が若くて経験が浅いからと言って拒否した。

拒否されたことでエッケは闘争心が涌き、自分の兜がいかにすばらしく、女王である妻が戦の支度をして送り出してくれ、また武器はディートリッヒのナーゲリング同様こびとのアルベリッヒが作った作ったものあるから、自分と戦って奪い取ってみよと挑発する。ディートリッヒはなおも戦うことを拒否したので、ついに臆病者呼ばわりされてしまい、彼にはそのような恥辱は我慢が出来なかったため、エッケと戦うことになった。

壮絶な戦いの末ディートリッヒが勝ち、今までの勇者同様自分の家来にしようと命は取らなかったが、瀕死のエッケは負けたことによって自分が妻の女王の物笑いになるからと言って自分の首をはねるようディートリッヒに頼んだ。ディートリッヒは挑発に乗って戦ったことを後悔したが、彼の頼みをききいれてエッケの首をはね、エッケの刀と甲冑を身につけ、エッケの首を馬の鞍にくくりつけてエッケの妻と娘達が住む城へと向かった。

エッケの装備のおかげでディートリッヒは怪しまれずに女王に会うことが出来たが、ディートリッヒは彼女がエッケの装備を調えて戦に送り出したことを非難し、エッケの首を女王の足下に投げた。嘆き悲しむ女王を置いて城を出たディートリッヒは、森に隠しておいた自分の甲冑に着替える前にエッケの兄弟のファゾルトに出会ってしまった。エッケの装備を纏っている男を見てファゾルトは、自分の兄弟が寝ている隙をついて殺害し、装備を盗んだものと思いディートリッヒに向かってきた。

ディートリッヒは不意を付かれ落馬して意識を失ったが、ファゾルトは一撃で殺めた時にしか武器を奪わない、という誓いをたてていたため、何も奪わずに街の方へと去っていった。意識を取り戻したディートリッヒは仕返ししてやろうとファゾルトの後を追いかけ、「兄弟の仇をうたないとは、お前は臆病者だ」と叫んだ。

ファゾルトは応戦し2人は互いに傷を受けたが、ファゾルトは自分が負けることを予感し、武器を差し出し潔くディートリッヒの家来になることを望んだ,しかしディートリッヒは「自分はお前の兄弟を殺したからお前を信用することは出来ない。しかし殺人の罪滅ぼしとお前に敬意を表してお前の面目を立て、お互いに境地に立ったときは助け合い、互いに平等である兄弟のような忠誠の誓いをたてよう」といい、ファゾルトはこの申し出を受け、2人はそれぞれ馬に乗って自分の進むべき方向へと去っていった。

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