岩井俊二 脚本・監督の実写版「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」DVD版(Third Edition)をベースに、LD版(おそらくビデオソフト版も同じ)、テレビ放送版(※)との違いを一覧にしたメモです。

※「if もしも」本放送の録画が残っていないため、TV版の検証には1994年6月15日放送の特番「岩井美学」内で再放送されたものを使用。ストーリーテラーのタモリのパートも残っており、ほぼ本放送版と同じではないかと想像されるものの、再放送にあたり再編集されている可能性もあるため、あくまで参考程度の情報としています。

もともとは自分用に作成した追加カット一覧でしたが、小説「少年たちは花火を横から見たかった」と、アニメ映画版の応援の意味を込め掲載します。

※IN・OUT点はDVD版のタイムコード

IN OUT DVD版 LD版 TV版※再放送
作品タイトルが追加  ストーリーテラー:タモリ~「if もしも」番組OP/ファーストカット TV版のみフェードインで10フレ長い
03m11s07f 03m13s08f 教室:典道が席に着こうとするカットが追加(この次のカットはTV版より頭3フレ短い)   
03m45s17f 04m02s16f 教室の生徒たち:稔が机の上を駆けて女子生徒にちょっかいを出し「すいません」と謝るまでが追加  ※稔が机の上を駆ける前のカット尻TV版は12フレ長い
04m10s14f 04m17s18f 炎色反応の実験:TV版では実験をのぞき込む生徒たち→炎のアップの順だったが、炎→生徒たち にカット順を入れ替え  ※炎のアップ、TV版は別テイク
05m26s10f 06m15s19f 炎色反応実験後:「赤はストロンチウム…」~「…一応目は通しておきなさい」までが追加   
06m45s05f 06m53s06f 校庭の掃除風景:ホウキでサッカーボールを転がして遊ぶ生徒たち~歩いてくるなずなのカットが追加  ※次のなずなが門扉を開くカット頭TV版は14フレ長い
09m40s26f 09m47s17f プール:起き上がるなずなのカットが追加され、競争を始めようとする典道と祐介に、「審判やってあげようか!」と声をかけながらなずながスタート地点に歩いてゆくまでの編集が異なる。また、この次の「50メートル?」というカットの頭がTV版より16フレ長い  ※「審判やってあげようか!」というセリフ、LD・DVDではOFFゼリフだが、TV版ではなずなのバストショットが使われている。
10m40s04f 11m25s19f プール:ターン後、祐介の泳ぎに併走する移動ショットが追加され、続く なずなが祐介に水をかけるカットから「5時に迎えに行くからね、必ずいてよ」とその場を去るまでのやり取りが別テイク(セミの声も違
う)となっている等、編集が大きく異なる。
LD版は移動ショットが無い。全体的にはTVと同じテイクと編集だが、ゴールしプールのふちに手をかける祐介のカット頭がTV版より114フレ長い。  
13m33s11f 13m37s10f 教室:祐介の「行こうぜ行こうぜ」のくだりでインサートされる典道のカットなど編集が異なる。    
13m52s13f 14m09s15f 下校:祐介「5時グラウンドだからな5時!」~「おめーに言われたくねえんだよ」までが追加    
15m29s18f 15m50s18f 靴を履く典道と祐介のカット、カット頭が削られ、カット尻をのばす形でスリップ ※音声はTV・LD版と同タイミング    
16m01s06f 16m20s07f 安曇医院:受付をのぞき込むなずな~受付の看護婦とのやり取りの編集が異なる   
18m19s18f 18m22s03f 典道と祐介が別れたカット尻が75フレ伸びている   
18m22s04f 18m23s22f 待ちくたびれている純一たちのカット頭が48フレ伸びている   
24m21s07f 24m37s03f オーバーラップ前後の典道と水中撮影のカット、スローのスピードが微妙に異なる    
25m22s26f 25m27s16f 教室:女子生徒たちが「ねえ、なずな知らない?」と探しに来るカットが追加され、次のカット頭がTV・LD版より28フレ短い    
25m43s24f 25m47s06f 教室;下校しようとする仲間たち、典道に「何がじゃねえよ、聞いてろよ」というカットが追加    
26m07s10f 26m45s28f 典道の部屋:ジュニア星座早見のカット~時計のカットが追加され、次のトイレ内でなずなに電話をする練習のカット頭が81フレ伸びている。「…野暮用出来ちゃってさ」まで   ※TV・LD版では、この前のシーンの典道が仲間と別れ花火大会のポスターを見るところから、なずなに電話をする練習のセリフが入る
26m59s24f 27m01s04f トイレ内:トイレットペーパーを引き出すカットの尻が40フレ伸びている    
32m57s27f 33m16s27f 花火大会への道中:和弘がリュックからバナナを出すカット~「お前、行商にでも行くつもりかよ」までが追加   
34m02s27f 34m03s25f 電車の時刻表のカット頭28フレ長い   
46m50s06f 47m17s25f 打ち上げ花火:TV版と比較して花火のフレアが大きく鮮やかになっているほか、TV版とは異なる映像素材を使用していると思しきカットも有る。   
エンドロール  ストーリーテラー:タモリ~「if もしも」番組ED
Copyright表示 
(C)1999 ROCKWELL EYES INC. (C)1996 Rockwell Eyes Inc.  
本編時間 
約49分30秒 ※ノーマンズ・ノーズロゴ消えてからマルシー消えるまで 約47分55秒 ※フジテレビロゴ消えてからマルシー消えるまで 約46分25秒 ※冒頭の日本映画監督協会新人賞受賞作品テロップ3秒除く
タイトル/エンドクレジットを除いた本編正味時間 
約46分42秒 ※タイトル・EDロール除く(1stカットの典道からラストカットの花火が終わるまで 約45分23秒 ※タイトル・EDロール除く(1stカットの典道からラストカットの花火が終わるまで 約43分31秒 ※「if もしも」OP・ED除く(1stカットの典道からラストカットの花火が終わるまで
このほか映像的な違いとして、DVD版は全編にわたりカラコレのやり直しを行ったようで、TV版・LD版と比べ、全体的に彩度が低めでやや暗めの映像となっている。
かわりに人物の肌色などが自然な色調になり、白飛びやギラついた印象は薄めに。また、TV放送時からフィルム効果を施した映像だったが、DVD版はTV・LD版と比較し、わずかに解像感が向上している。

<2017.8/18 08:00追記>
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 豪華版Blu-ray BOX」に収録された「New Color Grading」版との比較を追記。

今回確認が出来た「豪華版Blu-ray BOX」の変更点は下記のとおり。
※DVD版との違いを比較
※カラーグレーディングによる差違は除く

・”岩井俊二監督作品”スーパー、およびメインタイトル:高解像度の物に差し替えられ、「映倫」マークが削除。

・01m09s14f~01m09s15f 典道の家の店先:靴を履く典道の顔のカット尻1フレ短く、次の父親が釣り竿を磨くカット頭が1フレ長い。

・23m46s26f~23m46s26f 母親になずなが連れ戻されるシーン:路地に母娘が消えた後、コマが飛んでいる(木の葉の動きに注目)※スローモーションに入るタイミング?

・23m51s13f~23m51s16f 母親になずなが連れ戻されるシーン:路地に消えた母娘の様子に驚く順一と和弘のカット尻4フレ短く、次の典道のカット頭がその分の4フレ長い。※典道のカットの使いどころも異なる(シャツのなびき異なる)

・24m21s07f~24m37s03f 母親になずなが連れ戻されたあと「あの時、俺が勝ってれば…」:オーバーラップ前後の典道と水中撮影のカット、ノーマルスピードになっている。※過去バージョンはスローモーション

・26m40s05f~26m46s06f 典道の部屋:振り子時計のカット、使いどころが異なる(振り子のタイミング異なる)

・47m01s18f~47m05s19f 花火を見上げる典道のアップ、使いどころが異なる(まばたきのタイミング異なる)

・エンドロール:高解像度の物に差し替え。また、一部クレジットが削除され、HDリマスタリングスタッフが追加されている。(全体尺は同じのため、行間が詰まっている)

・Copyright表示:(C)Rockwell Eyes inc.


今回の検証でDVD版との違いが確認出来たのは以上。前バージョンとは微妙に使いどころが異なるカットもあり、そうしたカットが上記一覧の他にあるかもしれませんが、微妙すぎて見落としている可能性もあります。
ともかく、DVD版との差違は極々わずかながら、まったく同一というわけでは無かったのが驚きです。

<2017.8/18 08:00追記ここまで>


<「打ち上げ花火」関連データメモ>
1993年8月26日
20時00分~20時54分
「if もしも」第15回としてテレビ放送 ※放送キャンセルとなった回をカウントにいれ「打ち上げ花火」を第16回としている資料もあるが、実際の放送のタイトルスーパーでは”#15″と表示されている。
1993年x月xx日 第34回 映画監督協会新人賞を受賞
1994年6月15日
24時45分~25時45分
特番「岩井美学」放送
1995年8月12日 劇場公開(同時上映「undo」)
1996年7月19日 サウンドトラックCD発売
1996年8月21日 レーザーディスク版/ビデオソフト版発売
1999年8月07日 DVD版・ドキュメンタリー「少年たちは花火を横から見たかった」DVD発売
2017年6月17日 小説「少年たちは花火を横から見たかった」発売
2017年8月9日 豪華版Blu-ray BOX発売


<資料:本放送・「岩井美学」放送当時の「テレパル」誌>※クリックで拡大

↓当初、「打ち上げ花火~」の本放送が予定されていた1993年9月2日の番組表。
1993-09-02-telepal.jpg

↓本来、本広克行監督のエピソードが放送される予定だった1993年8月26日の番組表。
1993-08-26-telepal.jpg

↓あらすじ紹介欄。この時点でもタイトルは「少年たちは花火を横から見たかった(仮)」。
1993-08-26-telepal-detail.jpg

↓こちらは「岩井美学」放送日1994年6月15日の番組表
1994-06-15-telepal.jpg

↓「岩井美学」の番組紹介欄。
1994-06-15-telepal-detail.jpg


<2017.7/18追記:「if もしも」放送時オープニング タモリのセリフ書き起こし>



































□ 夏祭りの屋台(夜)
  おでん屋台のベンチに座っているタモリ(SE:打ち上げ花火の音)
タモリ 「夏の花火大会、良いですよねー。

しかも、こうやって屋台で一杯やりながら見る花火っつうのは格別なもんがあります。」
  そこに駆けてくる稔と純一 空を見上げ
稔   「見えた?見えた?」
純一  「こっからじゃ何にも見えねえよ。」
  走り去る稔と純一
タモリ 「子どもたちっていうのもまた、花火が大好きなんですよねー。

彼らは彼らなりに、花火を格別な物として受け止めているんでしょう。

さて、今日はちょっと大人になりかけた子供たちが主人公です。

花火大会のその日に、一体どんな「if」が彼らを待ち受けているのか、これから一緒に見ていくことにしましょう。」
     ――本編開始――


<2017.9/12追記:「if もしも」放送時エンディング タモリのセリフ書き起こし>

     ――本編おわり――
□ 夏祭りの屋台(夜)
  おでん屋台のベンチに座っているタモリ
タモリ 典道には、ふたつの道がありました。

祐介との、プールでの勝負がその分岐点でした。

どちらの道が良かったか、その問いは、それは愚問でしょう。

なぜなら、そのどちらを選択しても、結局この物語がひとつの悲しい結末にたどり着いてしまうしかないことには、変わりは無いわけです。

その結末を、典道が知るのは、おそらく夏休みが終わった9月の教室。

皮肉なもんです。(SE:打ち上げ花火の音)
     ――エンドクレジット開始――



2017.7/18追記:「if もしも」放送時オープニング タモリのセリフ書き起こし
2017.8/18追記:ブルーレイ版を比較
2017.9/12追記:「if もしも」放送時エンディング タモリのセリフ書き起こし

<関連>
・テレビ東京 ドラマ24「なぞの転校生」豆知識メモ–岩井俊二/長澤雅彦/ヘクとパスカル
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2014-03-25-3
・岩井俊二–「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 豪華版Blu-ray BOXが届いたので記念写真–山崎裕太/奥菜恵/半田孝幸
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2017-08-10-5
・ブルーレイ「リップヴァンウィンクルの花嫁 プレミアムボックス」が届いたので記念写真–岩井俊二/黒木華/綾野剛/Cocco
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2016-09-01-5
・岩井俊二「花とアリス殺人事件」のブルーレイが届いたので記念写真
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2015-08-11-4
・韓国盤ブルーレイBOX–岩井俊二「IWAI’S WHITE FILMS BLU-RAY BOXSET」を買ってみたので記念写真–Love Letter/四月物語/花とアリス
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2015-03-24-1
・ブルーレイ「なぞの転校生 Blu-ray BOX」が届いたー♪–岩井俊二/長澤雅彦/中村蒼/本郷奏多/桜井美南
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2014-05-13-3
・ブルーレイ岩井俊二「Love Letter」が届いたー♪
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2013-04-12-4
・岩井俊二「ヴァンパイア」「undo」「PiCNiC [完全版]」「スワロウテイル」BDと「friends after 3.11 劇場版」DVDが届いたー♪
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2013-03-20-4
・岩井俊二「四月物語」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」のブルーレイが届いたー♪
 (http://catalina.blog.ss-blog.jp/2012-09-05-1