ディズニーの特殊効果部門に所属していたハーマン・シュルタイスによる「ファンタジア」の撮影方法を記したスクラップブックが収録されている洋書「The Lost Notebooks: Herman Schultheis & the Secrets of Disney Movie Magic」が届いたので記念写真。※リンクはAmazon
(こないだTwitterにもつぶやいたけど、他にも写真を撮ってて勿体ないのでブログにも載せてみる。)


この本に収録されている元のスクラップブック自体は、2000年に発売された北米盤DVD-BOXの特典ディスク「Fantasia Legacy」や、2011年の国内盤BDの特典映像でも紹介されていたので、こういう記録が存在し、アメリカのウォルト・ディズニー・ファミリー・ミュージアムではタッチパネルディスプレイでインタラクティブ展示もされているという事は知っていたんだけども、その2011年時点では書籍化はされていなかった。

で、それから7~8年経った先日、朝ドラの「なつぞら」を観ているときに「ファンタジア」の事が頭に浮かんだところから「そういえばあのスクラップブックって、その後本になってたりしない、、、?」と思い出し、BDでシュルタイスの名前の綴りを確認、「schultheis notebook」でネットを検索してみたら、、、あった! 出てた! 洋書だけど! 5年も前に!

これは買わなくては!と、すぐさま洋書を扱っている日本のネット書店を探すも、既に在庫なしか、あっても海外発送でプレミア価格の状態。
どうせ海外発送なら国内の本屋で買う意味はあまり無いなと思ったので、海外のAmazonやAbeBooks、Barnes & Nobleなどをあたり、新品で日本までの送料を足して一番安く買えるところを探して購入。その後約1週間で無事到着となった。(重量級の本なので、DVDやBDの感覚で輸入しようと思うとちょっとビックリの送料を取られる店が多いのだ。)

ということで記念写真。(クリックで拡大)

↓表紙。 著者は「ファンタジア」のブルーレイでコメンタリーの進行をつとめたり、特典映像で解説をしているアニメーション史研究家のジョン・ケインメーカー。
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↓サイズは約30cm×30cmでLDと大体同サイズ。厚さは約3cmのハードカバー本で約2.5Kg位はあるので、持った感じはちょっとしたLD-BOXなみ。
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↓目次。前半は主にシュルタイス本人についての章、目的のスクラップブックは112p.からのPART TWO。
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↓スクラップブックのポケットに保存されていたテストフィルムのコマも脇に載っている。 手書きの字も読みやすくて、まとめ方がめちゃくちゃ几帳面。これが業務ではなく個人的に記した記録というのだからシュルタイスの性格がうかがえる。
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↓「春の祭典」冒頭の星雲カットの撮影風景。
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↓同じく「春の祭典」の火山の煙。 水槽に白いインクを流すという日本の特撮でもおなじみの手法。
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↓「くるみ割り人形」の雪の結晶が舞うカット。 回転しながら移動する結晶は一体どうなってるんだ!?、そして一瞬入る光の反射もどうやって??と思って見てたのを思い出す。(2000年の北米DVD特典などでもこのページは紹介されていたので、このカットのナゾはその時に氷解してたけど)
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↓「くるみ割り人形」クモの巣のしずくのカット。
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↓「時の踊り」の振り付けなど、シュルタイスがアニメーターたちの作画参考のために撮影した写真なども掲載。
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↓この写真はどこかでみた記憶があるけど、マルチch.音響システム「ファンタ・サウンド」についての記述も。
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↓裏表紙。
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ディズニーの長編初期作品の頃を扱った本というと、ウォルトの功績や、ナイン・オールドメンなどアニメーターたちの仕事を伝えるものはいくつも出ているけど、撮影をメインに持ってきた本というのはかなり珍しい。

「ファンタジア」は、線画台の上にセットアップした背景とセルを撮影する、ごく普通の平面のアニメーション撮影としても相当に高レベルで、シャッター開角度や線画台の移動量をコンピュータで制御することが出来なかった時代に、これだけ複雑な多重露光やカメラワークをやっていたというのも驚きに値するものだけど、それ以外に、どうやって撮ったのか誰も知らず、フィルムのアニメ撮影の実務経験がある人が見ても撮影方法が分からないカットが山ほどあるという状態が長く続いていて、その謎の多くが解けたのはこのスクラップブックが発見されて以降のこと。

それまでこの映画の撮影についての話といえば、「アヴェ・マリア」のラスト、木々を抜ける長いマルチのカットの撮影中、レンズを付け間違えたのに気付いてNG、慌てて撮り直しの作業を始めるも、撮影中に地震が起こって公開目前なのに最初からやり直したとか、その程度の話ばかりだったし(笑) ※つまり「アヴェ・マリア」のこのカットは最低でも3回撮影している!(自分なら2度目で旅に出る)

映画の公開から80年近くもたってから、こんなに貴重な資料を手元に置き読めるようになるとは、世の中何が起こるか分からない。

、、、、ていうか、こんな凄いことを1939年にやっていたとは!

実写なら1シーンのために色々なものを作ったり壊したりってのは当たり前だけど、セルアニメの撮影で、あるカットを撮るためだけに、そのカット専用の装置や仕掛けを作り、撮影が終わったら解体するというのは、アニメカメラマンというより、実写をやってる人の発想だなぁという印象を持った。

これは日本のアニメ界ではなかなか真似が出来ない作り方で、予算や時間といった部分以前に、そもそも「アニメーション撮影台」を使わない撮影という発想にはなかなか行かないと思うので、今さらながらちょっとしたカルチャーショック。
まぁ、東映動画とか一部の大きなスタジオ以外は、外部の会社に撮影を発注しなければいけないため、あまりヘンなことは頼めないし、たぶん受けてももらえないので、はじめからそんな特殊な撮影が必要なカットを入れようと思わないだろうけど。
(とはいえ日本でも、有名なところでは「風の谷のナウシカ」の王蟲のゴムマルチ、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」では地球儀の表面の世界地図を剥がし、そこに美術スタッフが地球を描いて回しながら撮影したりと、変わったことをやっていないわけでは無くて、これらにも驚いたもんだった。)

ともかく、「The Lost Notebooks: Herman Schultheis & the Secrets of Disney Movie Magic」は、撮影方法が分かった上で、もう一度「ファンタジア」が観たくなる、そんな本。

ディズニーの本なのにミッキーやドナルドの絵が全然載ってないからと敬遠せず、日本の出版社さんは是非とも日本語版を出していただきたいところ。

そしてディズニー、過去作の実写映画化やハラスメントのシーンカットもいいけど、このシュルタイスの偉業を伝記映画にするべきだと思う。



最後に、懐かしアイテムを引っ張り出して来たので、そちらも撮影。

↓LD-BOXの「ファンタジア スペシャル・コレクション」(アンコールプレス版)。特典映像として、40分のメイキングドキュメンタリー「ファンタジア 伝説と幻想の舞台裏」を収録しているほか、32p.カラーのブックレットやリトグラフなどを封入。 ちなみに、このドキュメンタリーは音楽と作画などが中心で、撮影に関しては「アヴェ・マリア」のために組んだマルチプレーン台をザックリ紹介し、レンズ間違いと地震のエピソードが語られた程度。
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↓こちらは「ファンタジア2000」のソフト化に合わせて発売された北米版DVD-BOX。「ファンタジア」「ファンタジア2000」に加え、特典ディスク「Fantasia Legacy」の3枚組。この「Fantasia Legacy」でスクラップブックの存在を知ることになる。
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