“Explanation of EVANGELION:1.01″を観てみた。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版ブログ:序」でも紹介されている通り、ほんのわずかな尺のカットに出てくる兵器や施設などについてもスーパーが乗っていて、しかも「ストラクチャー基礎梁固定用熱間圧延異形棒鋼式大型ロックボルト」(あってる?)なんて、普通に読むのも大変なスーパーが数秒で消えていってしまうので、常時リモコン片手の視聴(笑)
で、感心したのが、スーパーのアナログ感。
ブックレット上では”Explanation”の制作プロセスは説明されていないけども、普通に考えたら、本編ディスク用にテレシネされた「1.01」本編マスターに対して、PC上ないしポスプロ作業でスーパーを乗せていく、という作業になるはず。 なんだけども、どうもそういう当たり前かつ、簡単な作業だけじゃないっぽい。
スーパーを映像に馴染ませるため、白スーパーの明度を少し下げたり、文字のエッジをわずかにぼかしたり、微妙にノイズを足したりという部分は、すこしこだわりのある人なら誰でも思いつくと思うんだけども、画止まりがイマイチなフィルムのスーパーの感じをシミュレートしたのか、わずかなブレが加えられているカットも含まれていたのが面白かった。
「含まれていた」というのは、そうでないカットもあったりするのが実に興味深い。
この「1.01」の本編の映像もテレシネで、スタビライズもカンペキではないので、極わずかに上下左右にブレている事が多く若干画止まりが悪い。
その映像に、デジタル制作のスーパー素材を乗せるという話になった時、本編は微妙にブレて、スーパーは完全に固定されている状態になるのが最も簡単な仕上げかたになるはずで、その様にスーパーが(ほぼ)ビシッと止まっている様に見えるカットも相当数ある。(例:特装版DVD 0:00:41「神奈川県 小田原市 旧根府川付近」他)
が、それだけではイカンと思ったのか、スーパー自体にもわずかなブレを加えているカットがあったりして、フィルム感を醸し出している。
普通に考えられる方法だと、本編のブレとは別個に加える事になるスーパーのブレは、両者のブレ方向が一致せず、それぞれがバラバラの方向にブレるのが当然で、フィルム上で合成されたスーパーのシミュレーションとして考えた場合、これもスーパー合成の原理上起こり得るブレなので、「凝ってんなぁ」と感心しちゃうレベル。
が、そこから更に手間をかけているのでは?と思える点がある。
それは、本編のブレ方向に、スーパーのブレ方向が同期しているカット。(例;0:00:44「国際連合軍 第3師団第3戦車大隊 76式戦車(改)」他)
1カットだけなら偶然という事もあり得るけど、結構な数のカットが同様の動きを見せていて、スーパーを本編のブレにマッチムーブさせてるとしか思えない。(ブレが寸分の狂い無く完全に同期しているわけではなく、極々僅かに本編ブレとスーパーのブレがズレている)
単独のブレが加えられたスーパーを合成した本編デジタルデータをフィルムレコーディング→テレシネしたというプロセスも可能性としてはアリかも知れないけども、そもそもコスト的に考えて現実的ではなさそうなので、やっぱりマッチムーブしか考えられないんだけど、実際はどうなんだろう、、、。
ただ、「1.01」にするにあたって、再度フィルムレコーディングを行うカットも相当数合ったはずなので、スーパー入りも一緒にやっちゃったという可能性も高いけど。
あとは、劇場公開版そのままのカットと、1.01で修正が入ったカットでスーパー入れのプロセスが異なっている可能性もある。
まぁ、それはともかく、マッチムーブ自体は、ちょっとAfterEffectsあたりを使える程度のスキルさえあれば、技術レベルとしても大した事ではないし、作業自体の敷居は高くはないはずだけれども、そういう問題ではなく、もしも自分の想像通り、こういう部分にこだわりをもってスーパーのブレを意図的に加える指示を出しているのだとしたら、そのマニアックさがステキすぎる。
この”Explanation”のスーパーの凝り様、そして、世間では不評を買っている(テレシネの)本編も、フィルムレコーディングそのものが、庵野が目的とするルックを再現するためのフィルタワークのひとつで、そうして出来たネガこそが完成品と考え、DVDは当然そのフィルムから起こしたプリントからテレシネをするという手法、また、特装版DVDブックレットの「ミニチュア感覚」「操演感覚」の項で解説されている特撮映画を意識したあえてチープな映像をヨシとする考えのもとに施された演出等々、どれにも庵野の好みが明確に現れていて、感心しつつもちょっと呆れてしまうゴールデンウィークまっただ中の夕方、、、。
というか、お金は有るんだろうから、また自主製作で実写特撮映画撮ればいいのにとか思ったり、、、(笑)