陰陽夜話 第壱夜第弐夜 ★ 第参夜 ★ 第四夜

陰陽夜話

第参夜

1. 舞台鼎談(夢枕獏・中沢新一・河合隼雄)

一応、「現代の鬼」と言うテーマがあったようですが、内容は全然関係なかったです。陰陽師・陰陽道とも、関係ないお話が主でした

「哲学の東北」(中沢新一 著)

東北のような性質を持った場所は、どのようなものにもある。中沢氏がルーマニア(ではなかったかもしれないが、その辺りのヨーロッパ)を訪れたときに、教会を石ではなく、木で作ると言う話を、現地の大工さんがお酒を飲みながら話してくれたときに、そう思ったそうです。

「続物語を物語る」(河合隼雄 著)

「陰陽師」でもお馴染み、「玄象という琵琶…」が、河合さんは今昔物語の中でも 特にお気に入りなんだそうです。今昔物語では、博雅はなくなった琵琶を積極的に 探すのではなく、羅生門の下でじっと待っていると、鬼が琵琶を降ろしてくれる。
また、耳を済ませて聞くと(この場合、耳の良い人じゃないとダメですが)、琵琶の音が聞こえてきて、在処がわかる。こういう所が好きなんだそうです。
今昔物語は同じ目線で見て語られているので、今の心理学の本を読むよりも今昔物語の方が役に立つ、とおっしゃっていました。

バリ島の話

バリの芸能にはランダと言う魔女がいる。神様や魔女を演じる役者は、神様になりきってしまい、役の途中で舞台を放棄してしまうことがあるそうだ。
その話を聞いたとき、獏さんは作家生活の最後に、神様のことを書こうと思っているのだが(獏さん曰く「最終小説」)、「神様の書き方」は、大衆小説で書いてもよいのだ、と思ったそうです。

バリ島にはブータ(力、と言う意味)と言う言葉があり、テレビの取材で「ブータの力で豚にかわる呪術師」と言うのを取材したが、結局、夜は寝ているだけで豚にならなかった。別に呪術師がうそをついているとか、我々を騙そうとしているわけではない。それは、西洋の魔女狩りにも、通じるところがある。魔女はサバトの集会に行くときに、朝鮮人参の軟膏をぬり、それであたかも箒で空を飛んでいるような心地になるのだ。
※この話は、「KAWADE夢ムック 文藝別冊 [総特集] 安倍晴明
 (河出書房、ISBN4-309-97585-2)に詳しく出ています。

ナバホ

オフィシャルな神話というものは、存在しない。家々で神話は違うものである。
漁師の神話は、漁の神話に、山で猟をする人の神話は、山の要素が入ったものになる。同じように、「鬼」も人それぞれではないか・・・?

「源氏物語」(ライバルは寂聴!?)

河合氏は、近々「源氏物語」についての本を出版されるそうです。
「源氏物語」は、実は光源氏のことについてではなく、紫式部自身のことを書いているのではないか?
光源氏は1人の人間ではなく、いわば狂言回しで、1人の中に複数の男の要素が入っている。彼女が書きたかったのは、光源氏の一生ではなく、彼をとりまく回りの女性たち。浮き舟の出現によって、「私は私。男に定義されない女」を書くことが出来た。
源氏物語の最後の方は、光君の葛藤で、まるで現代小説のようになったが…。
「あさきゆめみし」を書いた大和和紀さんが、
「描いていて、嫌で嫌でたまらない」
と言っていたそうだが、光源氏を1人の男と考えなければ、あのような人間でも、納得が出来る。

まとめ(?)

中沢氏が「陰陽師」は、獏さんの小説の中で、一番ヒットしたと思う。
獏さんは、小説家の中ではめずらしいくらい、性格の良い作家です。
(ここで、獏さんは、「もっと大きい声で言って!」と笑いを誘いました)

 

2. 語り「這う鬼」(陰陽師付喪神ノ巻より)
  夢口云空(むんく:真ん中の字は「口へんに云」で一つの漢字です)
  (池田昌子・正宗一成・藤井秀亮)

今回はBGM付きで、なかなかムードがありました。ちょっと、ロールプレイングゲームの、妖しいところ探検、みたいな音楽でしたが。
シタールが使われていましたが、琵琶だったらもっと良かったのに…
付喪神ノ巻は、読んでいないか、話を忘れたので(^^;;)結構楽しめました。メーテルの声の晴明も、2回目なので慣れました。

 

3. 講釈「神道講釈 安部の晴明伝その参」旭堂小南陵

今回のお話は、時の帝の病を見事に治し、帝から賜った屋敷に親兄弟を呼び寄せて、幸せに暮らし始めるところからです。(聞くだけなので、判らない漢字はひらがなにしました。漢字も間違っているかもしれませんが、ご容赦を)

(あらすじ)  
安部の童子尾花丸改め晴明は、小野好古(よしふる)卿の娘、たまや姫を妻にもらい、都で幸せに暮らしていた。ある日父の保名が、晴明に「ほき内伝金烏玉兎集」を手渡す。

  ほき....ほう伝の2つの杯 ※1 
  内伝....秘伝
  金烏....太陽の中に住む3本足の烏
  玉兎....月に住むウサギ
と言う意味らしい。

晴明は「今の私には、まだ使いこなせない秘伝の書であるから、唐の国へと渡り、白道仙人の元で修行したい」と、唐へと渡った。

雍州城荊山(ようしゅうどうけいざん)の道なき道を登り、白道仙人の元へと通じる道もわからず、疲れて居眠りしていると、美しい鈴の音が聞こえてくる。どうやら、頭の中に直接響いて来ているらしい。顔を上げると、山の遥か上の方に、切り立った崖の一部分だけが平らになっており、そこに金鈴を持った白道仙人が座っていた。

しかし晴明は、どうやっても白道仙人の元へたどり着くことが出来ない。
「心眼でみるのじゃ。さすれば道は開ける」
との白道仙人の言葉に、目をつむって心眼で見ると、仙人の元への道が見えてきた。目をつむったままでも、歩けるくらいである。

「阿倍仲麻呂よ、250年ぶりじゃのう」
「私は安部晴明と申します。阿倍仲麻呂ではありません」
「よいよい、それはちゃんとわかっておる。そなたは仲麻呂の生まれ変わりじゃ」仙人は晴明に
「この中には、83の秘伝の巻物が入っておる。どうじゃ、蓋を開けて見よ」と、大きな箱を指さした。晴明は晴明は開けようとするが、重くて蓋が上がらない。
「千日の修行を終えることが出来たならば、そなたにもこの蓋が開けられるようになろう」

白道仙人は、晴明に
 七日間、何も食べない修行
 七日間、何も食べず、寝てはならない修行
 七日間、何も食べず、寝ることもなく、首から下を川の水に浸けている修行
を課した。無事にやり遂げることが出来た晴明は、千日の修行にも無事に耐えることが出来た。

じゃせいめいだん(邪正明断?)の箱に入っている、83の秘伝を伝えられ、修行が終わる千日目、遥か日本の方に、妖しの雲が立っているのが見える。

白道仙人は、「日本で良からぬ事が起こっているに相違ない」と晴明を「縮地(しゅくち)の法」で日本まで送り届けてくれることになった。

一方、日本では藤原元方と道満が、帝を殺そうと計画を練っていた。
それは、そのだとうたゆう(字が判りません)に宮中に火を付けさせ、帝を焼き殺そうと言うものだ。しかし、小野東風(みちかぜ)が、火打ち石の音を聞きつけ、事件は未然に終わる。

検非違使で、犯人のそのだとうたゆうを取り調べると、「晴明の友人、源満仲、満正(字は違うかも)の命令でやった」と言う。満仲、満正は捕らえられ、そのだとうたゆうと共に刑に処されることになってしまった。

首までの深さの穴を掘り、その中に入れられて回りに藁を積まれ、火をかけられ、「私はこれで死んでしまうのであろうか」と満仲・満正が諦めかけていると、そこへ晴明が激しい雨、雷と共に、秘伝の入った箱を背負って、天から落ちてきた。晴明は御幣を取りだし、四隅に立て、祈り始めると、とうたゆうは苦しそうにうめいて、「源満仲、満正に命令されたのではない」と白状する。満仲・満正は命拾いをするが、とうたゆうは、自分に命令した人物の名はついに白状することなく、刑に処されたのだった。

企みが失敗に終わった道満は、晴明に酒を飲ませてへべれけになったところを、切り刻んでしまうことを思い立つ。宴でたくさん酒を飲まされた晴明は、ついに切りかかれて、無惨に切られてしまった。 

晴明の息子の吉平が死体を集め、白道上人に生魂続命しきめの法、魂魄戻しの法をお願いしに行くのだが、それは明日の第四夜のお楽しみ…。  

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※1......ほきとは,古代中国の神祭りの祭器のことで、
     『ほ』は外側が四角(地を現す)で内が円形(天を現す)
     『き』は外が円形で、内が四角で共に天地を象ったものだそうです。  
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    (情報提供ありがとうございました)

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