劇場版 抱かれたい男1位に脅されています。〜スペイン編〜

原作:桜日梯子
監督:龍輪直征
脚本:成田良美
キャラクターデザイン:芝美奈子/川口千里
音楽:横山克
制作:CloverWorks

東谷准太:小野友樹
西條高人:高橋広樹
セレス:速水奨
アントニオ:落合福嗣
卯坂和臣:鳥海浩輔
在須清崇:羽多野渉
綾木千広:佐藤拓也
成宮涼:内田雄馬
八千代:平野文


2018年に放送されていたTVシリーズの続編なのだが、いまひとつ共感できない…
テレビシリーズは「ここまで人に思われたことはない。こんな風に思われて、今更放り出されたら…」という気持ちに「そうだよねぇ」と思った。
お互いの気持ちが別々に語られてた構成も良かったんだと思う。
しかし、スペイン編は高人の「重荷になってしまう」も、チュン太の気持ちも今ひとつ共感できず…
高人に「別れよう」と言われた時も、自信たっぷりに自力で解決してたのに、急に「去って行ってしまったら」と不安がるのがよくわからない。

チュン太のスーパーさは、金がないとできないだろうと思っていたが、やはりいいところのお坊ちゃんだった。
まだ駆け出しでは、あんな広いタワーマンションには住めないよ。
チュン太の祖父であるスペイン人のセレスは、かっこよかった。

テレビシリーズより作画は良かったが、劇場版だからすごく良いというわけでもなく…
そういえば、番宣?のプロモーショントークの映像はフルGで作られていてチュン太はかなり違和感があったが、本編の人間は全て手書きでCGはなかったんじゃないか?
背景と自動車はCG使っていた。

冒頭の舞台「血の婚礼」の練習のフラメンコの作画はイマイチだったが、スペインでの「求愛ダンス」は枚数も使って作画していて、このシーンはよかった。短かったけど…
首の下の斜線の影がなくなったのは良い。

音は期待してなかったけど、割と凝っていた。
フラメンコのシーンは、ちょっとその場の臨場感?のようなものがあった。

今回も在須は何のために出てきたのかよくわからない
TVシリーズの時もちょこっとだけ出てきて、卯坂が恐れおののいていたが、映画では卯坂の方が立場が上のように感じた。
「血の婚礼」の音楽を引き受ける、と言っていたが、次回への伏線なのか?
そして、在須の歌うふるさと、そんなにいい歌だったかなぁ…










ネタバレのあらすじ












「真昼の星」の続編の条件として卯坂が出した「二人芝居」は、スペインの劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカの「血の婚礼」だった。花嫁を奪われた花婿が、奪ったレオナルドと決闘して殺しあって死ぬ、というストーリー。
レオナルドを西條高人、花婿を東谷准太が演じる。

二人はフラメンコのレッスンを受けるが、祖父がスペイン人のチュン太に才能を見せつけられる高人。
「このままじゃ、一緒に生きていくどころか、俺はこいつの才能に置いていかれる」
高人はチュン太に「しばらく日本を離れる。お前はお前のやるべきことをしろ」と言う。
去って行く後ろ姿を見てチュン太は高人に「別れよう」と言われた時のことを思い出し、高人が自分から去って行ってしまうのではないか、と不安に感じた。
あの自信たっぷりのチュン太が、そんなこと思うかなぁ…?


一人スペインへ来た高人がタブラオを周りフラメンコを見て回っていると、ギター店の前でフラメンコを踊っている年配の男に惹きつけられる。
見知らぬ子供に手を出され、手を握ると指輪を取られてしまうが、そのスリの子供を捕まえてくれたのが、先ほどのフラメンコを踊ってた男、セレスだった。
セレスは指輪に彫られた文字「Mi tesoro」を見て「スペインにいい人でもいるのかい?」と聞く。

そこへ「チュン太はいただいた。返して欲しければミハスのバル”Mi Colina”へ来い」という口を塞がれたようなチュン太の写真が届く。
セレスはミハスで店をやっているというので、帰る車に乗せてもらい、指定した場所へ行くと、そこはなんとセレスの店で、チュン太はセレスの孫であり、なんと店の手伝いをしていた。
メールはセレスの幼馴染のアントニオが「大事な人ができた」と言ったチュン太の相手に嫉妬して送ってきたのだ。
アントニオは、バケーションでスペインにやってくるチュン太のことが子供の頃から好きで、チュン太をかけてフラメンコで勝負しよう、と高人に言う。
アントニオはプロのフラメンコダンサーであったため、勝てるわけもなく、「素人にしてはよくやっているが、あんたはやっぱりニーニャ(お嬢ちゃん)だ」と、綺麗なだけで情熱がない、と言われてしまう。
チュン太は「結果がどうであろうと、俺には高人さんとの道しかない」と言うが、「結果は結果だ。約束だからな」と、高人はチュン太の指輪をアントニオに預けた。
このアントニオがいつもがなっていて暑苦しかった…

その夜、セレスの家に泊めてもらうことになる。
チュン太は高人のフラメンコを「凛としていて綺麗だ。出会った時から、高人さんはそうだった。今でも変わってない」と言うが、高人は「変わらないとダメだ」と思う。
「一人でなんとかできないとダメなんだよ!今日はその辺のバーで過ごす。じゃあな、東谷」と出て行こうとすると、「行くな!」首に巻いていたスカーフで手をベッドへ縛り付けるチュン太。
「甘かったかな。前に、離れられないようにしてあげるって、言いましたよね。高人さんは、これから何をされるんですか。…わかってますよね」
サドチュン太に対して「なんだか、抱きしめてあげなきゃならないような気がする」と思う高人。
絵で表現するのではなく、言葉で説明しているんだよなぁ…
「高人さんがまたイッた…たくさんしてあげたのに、まだねだるなんて…」
こういうセリフの時に二人ともちゃんとズボンを履いているのは不自然じゃないか??

翌朝、チュン太が朝食だと呼びに行くと、部屋はもぬけの空だった。
高人はアントニオのところに行き、フラメンコを教えてくれ、ついでにホテルに空きがないから泊めてくれと頼み込む。
アントニオの家はパン屋で、「何で俺が!」とフランスパンで高人を殴るアントニオを母親が叱り「かわいそうに目が腫れてるじゃないか」と部屋へ連れて行くように言いつける。

「一緒に生きてくって決めたんだ。あいつの有り余る才能に、俺が重荷になるわけにはいかないんだ」という高人に「おまえ、それちゃんと言ったのか。もし、准太が『一緒に背負ってくれ』って言ったら、お前断るのか」

アントニオは子供の頃からだが弱く、セレスのフラメンコ教室へ通わされたことを話す。アントニオはセレスのことが好きになり、褒めてもらいたくて頑張ったが、セレスには妻がいた。妻の八千代にシギリージャを踊っているところを見て失恋を悟ったが、それでも諦めきれず雨樋を登って二階の部屋を覗いていたら、夏休みで遊びにきていたチュン太に声をかけられ、そのはずみでチュン太の上に落ち、チュン太は腕の骨にヒビが入った。

祖父のことが好きなのか、と聞くチュン太に「好きだよ!でも、セレスがきゅんとなるのは自分じゃない」
「そんなに泣いちゃうくらい好きなんだ。素敵だね」というチュン太。
「そんな風になれたら、どんな風景が見えるんだろ」
そう言ったチュン太の目はガラス玉のようだった、というアントニオに、高人は「ガラス玉のような目をしているチュン太なんて知らない、と思う。
「久々に帰ってきたら、『大切なものを見つけた』と言いやがって、ついに見つけちまったんだな。あいつにとってのお前はお前が思っている以上だぜ」

一晩だけなら教えてやると、アントニオのしごきを受け、指輪を返してもらい、Mi Colinaに戻る高人だが、途中で目に入ったジュエリーショップに寄り、指輪に文字を掘らせてくれ、と頼む。

Mi Colinaに戻ると、セレスは花に水をあげていた。
「どの花が好きか」と聞くセレスに高人が「この葉っぱが好きです」と観葉植物みたいなものを指して答えると、「准太はね、全部好きだと言ったんだ。それは『どれも同じ』っていう意味に近いと思わないか?」

セレスは自分の生い立ちを語った。
セレスの娘夫婦は日本で起業し、裕福で円満な家庭を築いている。准太も大人たちに囲まれて生きてきたと思うが、あの子の中では何も起こらなかった、准太には自分と同じ血が流れてると思う。
自分はグラナダの出身だが、今はグラナダの丘の上に根付いていても元は流浪の民で、落ち着いた暮らしが性に合わず、街に出てフラメンコを踊って日銭を稼いだり、裕福なご婦人にご好意をいただいたりした。(つまり、体を売った、ということか?)
なぜ、准太が君に惹かれたのか、よくわかる。君の方がはるかに心の幹が太い。
自分の妻の八千代もそうだった。自分の絵を描かせてくれと追ってきて、ちょっと不気味だった。
裕福な観光客の戯れだと思っていたのだが、そうでもなく、八千代が描いた私の絵は色彩豊かで、絵を見て呆けてしまった私を見て、そんな顔は初めて見た、と言われた。二人で移り住んだこの場所が、「私の丘」なんだ。

「八千代はね、絵が下手なんだ」
八千代の絵は部屋に飾られており、子供のいたずら書きのような絵だったのだ。
セレスはチュン太は教会近くの展望台にいる、と教え、オレンジを投げてよこす。
「君の手からチュン太に渡してあげてくれ。そして、あの丘も見に行けばいいよ」

チュン太は展望台の椅子に座って考えていた。
子供の時に電車が一方にだけ走り続けるジオラマを見て、「これが自分の世界だ」と思った。他の人と違って自分は感情を揺さぶられることがなく、凪いでいる。あの回り続ける電車のように、自分はただ息をして生きて行くだけなのだ。

高人がベンチに座っているチュン太にオレンジを投げて渡す。
チュン太が「オレンジ…」とつぶやく。

スペイン語に、Tu´ eres mi media naranja. (あなたは私の半分のオレンジだ。)という有名なことわざがあるそうで、切り分けたオレンジ同士は、もう片方としかぴったりくっつくことはない、つまり、「ベストパートナー、妻、夫」を指すらしい。
察しのいいチュン太のことだから、高人がオレンジの意味を知って渡したとは思ってないだろう。

チュン太にグラナダのサクラモンテの丘まで連れて行ってくれ、と頼む高人。
運転しながらチュン太は思った。
「ただ息をして生きる、そう思っていた。この人に出会うまでは」

セレスの言っていたタブラオを尋ねると、今日は貸切だという。しかし、チュン太の顔を見たおかみは、「セレスの孫なら」と入れてくれた。
フラメンコショーを見る高人とチュン太。
ここのフラメンコのカットは枚数使ってちゃんと描いていた。
大御所ダンサー?のマリアがトリで踊ることになったが、寸劇を始め、チュン太を「花婿だ」と言い出す。チュン太がマリアのところへ行くと、「あんたは浮気をしている。あいつだろ!浮気相手と勝負だ」と言いだし、高人を指差した。
高人はシューズを取り出し、「俺のために踊ってくれるんですか?」と喜ぶチュン太に「ああ、お前のために踊ってやる。目を閉じるなよ」と舞台に立った。

踊りながら高人は思った。
「完璧を目指して敷いたレールに乗って俳優をやってきたが、今日はチュン太だけを思うただの西條高人だ。…感情がままならない。思えば思うほど思うようにならず、もどかしく悔しい。でも、こんなにも俺はお前を思わずにいられない!」
激しく踊る高人。
ダンスが終わると、観客から「ブラボー!」の喝采を浴びる。
おばあちゃんダンサーのマリアも「花婿はあんたにくれてやる」と言った。
「ちゃんと見てたか?」
「頭がおかしくなりそうだ」
「お互い様だろ」
チュン太はいきなり高人をお姫様抱っこし、表へ連れ出し、店の裏?のベンチで愛し合う。
こんなところでやっていいんですか…

グラナダの丘から景色を眺める二人。
「この丘には何度か連れてきてもらったことがあるんです。こういう綺麗な風景だったんだな…俺、何もなかったんです。俺には世界と交わる心がないんだって、諦めてた。でも、違ったんだ。俺にもちゃんとあった。心を揺さぶられるものが。こんなにも世界は鮮やかなんだと、一瞬で教えてくれる人が。そして、恋をするとこんなにも弱くなるんだってことが…失うのが、怖い」
「不安か」
「不安です。別れようと言われた日は、心がぐちゃぐちゃになりました」
「もう言わない」
「抱きしめて、キスしていいですか。…あなたのそばにいていいですか」
「チュン太。この先一緒に生きるためには、ずっと一緒じゃダメだ。でも、俺は絶対お前のもとに帰るし、お前も絶対帰ってこい」
二人はしっかりと抱き合った。

セレスのところに帰り、素晴らしい景色だった、とチュン太は報告する。
「なんだか、色気を感じるね。これは美人をかけて孫と争うのも一興」と高人の肩を抱こうとするセレスに「アブエリート(おじいちゃん)」とセレスの手を掴むチュン太。
「余裕のない男は好かれないぞ」とセレスが応じる。
スペイン語の会話なので何を言っているか高人にはわからなかったが、「チュン太が圧されている…」というのはわかった。

そこへ祖母の八千代が帰ってくる。
高人はすでに祖母はなくなったとお思っていたのだが、なんと旅行へ行っていたというのだ。「Mi tesoro、私の宝物」と行って八千代を迎えるセレス。指輪に彫られた文字の意味を知り、「恥ずかしいだろ!」という高人。
チュン太が作ったパエリアをみんなで食べる。セレスが「准太は日本でもパエリアを作るのかい?パエリアは男の料理、好きな人のために作る料理なんだよ」
「そうですね、作ってます」
「ハハハ、あの孫がね。教えた甲斐があったよ」
残りのオフを八千代のモデルになったりして過ごす高人。

日本へ帰るために別れる時、八千代は「描いた絵は色をつけたら送るわね」というが、セレスとチュン太はカラフルに塗られた高人の顔を想像していた。
「指輪、いつはめられるんですか?アントニオはもう返したって言ってました」というチュン太に高人はしぶしぶ指輪を渡すが、裏に掘られている下手くそな「Mi tesoro」の文字に喜ぶチュン太。
「それは…失敗した」と言い訳する高人。

アントニオがパンをもって別れを言いにやってくる。
「ニーニャの貧相な体に飽きたら、いつでも俺のところに戻ってこいよ!」
「アントニオ。ほんとうにありがとう。今も昔も、君は俺の一番の友達だよ」
アントニオと高人がやりあっているところへセレスが尋ねる。
「久しぶりに聞いてみようか。准太はどの花が好きかい?」
「オレンジの花かな」

飛行機のビジネスクラス?で隣り合わせに座る2人。
高人は寝ているが、指輪をはめた手を握るチュン太。
「あなたを思うことができるこの世界は、苦しくて、切なくて、でも、こんなにも綺麗だ」
高人は起きるのかと思ったが、寝たままだった。

エンドロールの後、高人がパエリアを作るが、「魔女のスープ」のような物体になった。
「高人さん、俺、米の入ったもんじゃって初めてです」
しかし、チュン太は美味しそうに食べていた。

王様のブランチのランキングに入っていてびっくり。

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