この世界の片隅に

原作:こうの史代
監督/脚本:片渕須直
監督補/画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン/作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
企画:丸山正雄
プロデューサー:真木太郎(GENCO)
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル

声の出演
北條すず:のん        北條周作:細谷佳正
黒村晴美:稲葉菜月      黒村径子:尾身美詞
水原哲:小野大輔       浦野すみ:潘めぐみ
北條円太郎:牛山茂      北條サン:新谷真弓
白木リン:岩井七世      浦野十郎:小山剛志
浦野キセノ:津田真澄     森田イト:京田尚子
小林の伯父:佐々木望     小林の伯母:塩田朋子
知多さん:瀬田ひろ美     刈谷さん:たちばなことね
堂本さん:世弥きくよ
八木菜緒(文化放送アナウンサー)
澁谷天外(特別出演)

主人公のすずが少女から大人になってお嫁に行き、呉の町で終戦を迎え、被災しても前向きに生きてく姿を淡々と描いた映画。
すずの声は「あまちゃん」の能年玲奈改めのん。 時々顔がよぎるが、広島弁で「ばれとりましたか」とほんわか言うところなどは、すずのほんわかした「あまり物事を深く考えない」と本編中に本人が言っていた性格にとても良く合っていた。
声優がのんである、ということで、かなり圧力がかかって全く宣伝できなかったらしく、そして公開館も少ないために、ものすごーーーーく混んででいた。(見に行ったのは11月上旬です)
口コミで広がって、毎日ほぼ満席状態だ、と劇場のスタッフは言っていた。 (旧館2階の発券機に列ができてるのを初めて見た。そして、多くの人がFelicaではなく、予約番号を打って発見しているので、普段見に来ない人たちが見にきているんだな、と思った・・・)
年配の人も結構いて、泣いている人もいたようです。

話はすずが7〜8歳の頃から始まる。
すずは絵を描く事が好きで、絵を描くカットがあるが、なかなか細かい描写だ。

会った事がない人からお嫁に来てほしい、と請われ、広島から呉へ嫁いでゆく。 嫁ぎ先には「ごちそうさん」の和枝ちゃんのようなお姉さんがいたりして(あそこまで意地悪じゃないけど)、楽しい事もあれば辛い事もあり、そのうち戦争もひどくなっていく中でも、日々の生活を少しでも楽しく、前向きに生きていくすずを見ていると、戦時中の普通の暮らしは、こうやってがんばっている人がいたんだろうな…と思った。

説明のようなものは一切なく、日付が出るだけ。戦争について多少知っていないと、何の事なのかわからないかもしれない。 さすがに終戦の日は知っているが、原爆投下の正確な日はちょっと怪しかったりする。
(関東に住んでいるので、東京大空襲が3月10日というのはさすがに知っているが)
そのため、そろそろこの辺りで、あの出来事が起こっているはず…くらいでしかわからなかった。

「君の名は。」に4.5付けちゃったので、評価は4.75。

評価:1f






かなり詳しいあらすじとネタバレ













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すずの家は海苔の養殖をしており、8歳の頃病気になった兄の代わりに海苔を広島の町へ届けにいくが、その途中で迷子になってしまう。 篭を背負った大男がすずを目的地までつれていってくれるというので肩車され、望遠鏡を渡されてそれで遠くを眺めていたら、急に揺れて篭の中へ落下、 篭の中には男の子がいた。なんと子ども二人が入っても余裕がある大きさの篭なのだ。
男の子は「自分たちはさらわれてこの化け物に食われてしまう」というので、すずは海苔を星形や三日月にくりぬき、双眼鏡に貼付けて化け物に見せると、「夜になると寝てしまう」と話していたばけものは倒れて眠りこけたので、すずと男の子は篭から脱出することができた。男の子は「こいつは今日の晩ご飯を取り逃がしてしまったんだな」と少し同情したので、すずは妹と兄のために買ったお土産のキャラメルをばけものの長い爪を生やした手に握らせて逃げた。
すずはこの出来事を絵に描きながら妹のすみに語っていた。

あとでわかる事だが、この時の男の子が後のすずの夫になる周作だった。

毎年、すずの家族は夏になると潮がひいて歩けるようになった干潟の向こうの祖母の家へいくらしい。スイカを持って行ったが、すずたち兄妹が昼寝をしていると、屋根裏から汚い身なりの女の子が顔をのぞかせて、降りて来て、すずたちが食べたスイカの皮を食べ始めたので、「スイカ、もらってきてあげようか?」というと女の子はうなずく。
スイカを持ってすずが戻ってくると女の子はいなかった。祖母が「(スイカを)置いとけば、食べにくるよ」といい、すずたち家族は自宅へ帰っていく。

この女の子が、あとで遊郭で出会うリンだった。

学校の授業で絵をかくすず。
先生が「描き終わったものから帰ってよろしい」と言われ、絵が上手なすずはいつもほめられていたようだ。
すずが海が見える林のようなところにコクバを集めに行くと、同級生の水原哲がいた。画用紙は白いままで、すずが「描かないといつまでたっても帰れないよ」と言うと「描きたいならおまえが描け」と言われてしまう。
すずは海と海を眺める水原の後ろ姿を描き、水原が「波がウサギのように見える」と言ったので、海の上に跳んでるウサギを描いた。
水原の兄は海軍に入ったがどうも亡くなってしまったようで、すずの描いた絵を見て水原は「こんな絵を見せられたら海を嫌いになれん」と言い、鉛筆をすずにくれた。
後に水原と再会した時に「この絵の出来をほめた先生が、作品展に応募して賞をもらってしまったため、非常に居心地が悪かった」と水原は告白している。

3年くらいずつ時間が過ぎていき、広島の町をスケッチしたりするすず。
そこには後に「原爆ドーム」となってしまう「広島県物産陳列館」もあった。

この広島の町が、後に廃墟となってしまう事のはわかっているので、ああ、なくなってしまうんだなぁ…と思いながら見てました。被爆する前の広島の町を見る機会はあまりないので、こんな町だったんだなぁとも。

19歳になったある時、祖母の家にいると「呉に済んでいるという人が、あんた(すず)を嫁に欲しい、と来ているそうだから、早く家に帰れ」と連絡がくる。
祖母は「気に入らなかったら断ればいい」と言って「もし、お嫁に行く事になったら、結婚式の晩に婿さんが『傘を一本持って来たか』と言うから、そうしたら『はい。新しいものを持ってきました』と言って、婿さんが『さしてもいいか』と言ったら『どうぞ』と言うんだよ」とすずに教える。 すずは「なんで?」と尋ねるが「なんでも、そういうものだから」というような事を言う。
すずは祖母が作ってくれた着物を持って帰路につくが、途中で水原と出会う。
すずは水原が見合いの相手かと思っていたがそうではなく、兄の7回忌で戻って来ただけだった。自分より妹の方がかわいいから、間違えてるのでは」というすずに「そんな事はないと思う」と言って、水原は去って行った。
水原と絵を描いた林のところで着物をかぶってたたずみ「どうしたもんかねぇ…」と考えていると、そこに親子がやってきてすずに道を尋ねる。
息子の方が「さっきそこで海兵さん(水原のこと)に教えてもらったんだが」と言うがすずは水原の事だとわかり「あの人の言う事は珍妙だから」と道を教えてあげたが、その二人が後の夫となる周作と父親だった。
その後再び尋ねて来た時に、すずの父が「無事に帰れましたか?」と尋ねた時に「着物を被った珍妙な女の人に道を教えてもらって、無事に帰れました」と周作の父が答えるのを聞いて苦笑いするすずだった…。

すずは嫁に行く事を受け入れ、呉の北條家で結婚式を挙げるために汽車で呉へ向かう。
家の手前で小林さんという女性に会い、挨拶をするが、すずはお姑さんと勘違いし「ふつつか者ですが…」と挨拶し始めて「仲人をつとめる伯母の小林です」と言われ、両親に「嫁入り先の名字も覚えてないのか、大丈夫なのか?」と言われてしまう。昭和19年で、戦争は厳しくなって行く頃だと思うのに、煮物や巻き寿司などよく準備できたなあと思うごちそうだった。
「遠慮しないで食べな」と勧められるすず。ふと隣にいる新郎を見ると、膝の上で手を握りしめ、ほとんど何も食べなかった。 両親と妹は広島へ帰ってゆき、すずの北條家での嫁としての生活が始まった。
お姑さんのサンは足が悪く、家事などをよろしくお願い、と言われた。 すずがお風呂から上がると、部屋にはもう布団が2組敷かれていたので、すずは本を読んでいた周作に礼を言う。
周作はすずに「傘を持って来たか」と聞き、すずが「新しいのを持って来た」と言ったところで周作は「貸してくれ」と言い、窓を開け干されていた干し柿を傘の柄でたぐり寄せて取り、すずにも干し柿を渡して食べた。
すずが自分たちは過去に会った事があるのか、と聞くが、会った事があると答えるだけで、周作は詳細を話さないし、すずも「自分はぼーっとしてるから」と深く聞こうとはしなかった。

すずは実家に手紙を書くが、嫁ぎ先の住所を知らず、食事の時に「ここは…何町の何丁目でしょう?」と恐る恐る聞いて、家族に驚かれたり、家の中を整理すると、義姉の径子の帽子や洋服が出て来て、「お姉さんってモガだったんですねぇ…」とか、近所の仲が良くない奥さんと気を使いながら配給をもらいに行ったり、大変だがそれなりに楽しそうに生活していた。

ある時、義姉の径子がやってきて、「冴えない格好だ」と言われ、広島弁で言っていたので何だか良くわからなかったが、すずが着物でモンペのツーピース?を作っていたのを見ると、自分が家事をするからその間に服を作れ、と言っていたらしい。すずは、服を作った残りの生地で径子の娘の晴美に巾着を作ってあげた。
ちゃきちゃきした径子から見ると、ある意味トロいとも言えるすずはイライラするらしく、「自分がやる!」とものすごい勢いで家事をこなして行った。そして「自分がいれば周作に嫁はいらなかったのかも。すずさん、広島へ帰ったら?」と言われ、こりゃ離縁か!?と思ったが、お姑さんが「それはいい、2〜3日里帰りしてきかなさい」と言ってすずの里帰りが決まった。

実家に帰ったらすずは、寝ぼけて「呉に嫁に行った夢を見た」と言ったりしていたが、妹のすみがすずの10円ハゲを見つける。
呉へ帰る日になり、駅へ行ったが切符が売り切れで、実家に戻ってくるすず。母に「嫁入り先の家の人が気の毒になってくる…」と言われてしまった。

嫁ぎ先の北條家に戻ると、晴美にハゲが見つかってしまい、「墨で塗るから硯かして」と晴美は径子にねだる。
周作とすずは野菜を作っている段々畑で戦艦大和が入港する様子を見るが、周作がすずの頭に手をやるのですずが払いのけ、二人の仲が少し険悪になってしまい、「広島が恋しくなって帰りたいのか」と言われてしまう。すずが大和をよく見ようと乗り出したら、畑の縁から落ちそうになり、手を出した周作も一緒に落ちてしまったが、それがきっかけで仲直りできた。

そのうち配給もだんだんと少なくなって行き、めざし4匹が4人の1日分の食材だったりするため、その辺に生えている野草もおかずの材料となる毎日。
この工夫がすごいのと、勤めてる訳ではないので時間があるからか、何時間も煮たり丁寧に下ごしらえして工夫して食事の支度をしている。
傑作だったのは楠木正成が戦場で行ったらしいご飯の炊き方。ものすごくご飯が膨張しているようだが、4人の反応だと美味くはなかったらしい。

空襲が激しくなって来て、建物疎開が行われるようになり、義姉の径子の嫁ぎ先の時計店も建物疎開の対象になった。
径子の夫は既に亡くなっており、長男のヒサオは夫の祖父母が跡取りだと引き取って下関に行く事になり、径子は離縁して戻って来たのだ。

建物疎開って、そういえばそんなの聞いた事がある、と言う認識だ。若い人には説明ないとわからないよね。

その後、防空壕を庭に作る事になり、ドラマなどでは出来上がった防空壕に避難するのはよく見たが、そうだよね、作らないと防空壕はできないよね…。
壁面をまっすぐにして、四角い空間を作るのは大変だっただろう。建物疎開で壊された、径子の家だった木材などを持って来たようで、「薪には困らない」というようなことを言っていたが、周作が古い畳を中に敷き、梁には径子の子ども達が背の高さを計って刻んだ柱を使ったので、それを見つけた径子が愛しそうに柱を撫で、周作に礼を言っていた。

畑から見える港に軍艦が入港し、晴美は船の種類を良く知っていて説明してくれたが、急に「カナトコ雲」がわき、いきなり雨が降って来たため、すずと晴美はあわてて家へ戻る。周作とすずは防空壕で雨宿りするが、そこで見つめ合って接吻をするが、奥に姑と舅も雨宿りしていることに気づかず、奥から二人が出て来て「夫婦なんだから仲がいい事は良い事だ」と言われ赤面する。

初夜の床でも柿を食べてたし、この二人清い関係のまま?
いや若い男なんだから、いくらなんでもそれはないだろう…しかし、そのような描写はなく…と思っていたが、やっぱり清いままではなかったのね。

ある日、すずが畑から見える軍港をスケッチしていると、いきなり憲兵にスケッチブックを取り上げられ、家まで連行されたあげく「スパイ行為をしていた」とさんざん怒られ、スケッチブックは取り上げられてしまった。
その様子を径子と姑のサンは困ったような顔をしてみていたが、周作が帰ってくると「すずが間諜?そんなことするわけないのに…」と笑い出した。困ったような顔は、実は笑いをこらえるのに必死な顔だったのだ。

また、砂糖を蟻から守ろうとたらいに容器を浮かべたら、そのまま水没、甘い水になってしまい、姑のサンからお金をもらって闇市に買いに行くことに。あまりの値段の高さにびっくりし、悩んだあげくに買って帰るが、「このままだとキャラメルや靴下もいったいいくらになってしまうんだ…?と考えながら歩いていたら、知らないところにいる事に気がつく。どうやらそこは遊郭で、帰り道を遊女達に尋ねても誰も教えてくれず、すずは途方に暮れて地面にスイカやキャラメルの絵を描く。
通りかかったリンという女性が帰り方を教えてくれるが、リンとの会話では広島出身であることがわかり、どうやら幼い頃に祖母の家で会った女の子らしき事が、見ている人にはわかる。
リンは絵を描いてくれと頼むが知り合いが通りかかって「やっぱりいいや」と言う。すずは「今度会う時に描いて持ってくる」と約束する。

ある日、周作から近所の家に電話がかかってきて、帳面を届けてほしい、ということだった。
普段着で出かけようとしたら「周作が恥をかく」と径子にえらく怒られ、おしろいをはたいていつもよりも白い顔で出かけて行くすず。その顔を見て「顔が白いが具合でもわるいのか?」と周作が聞くが「お姉さんに言われて…」と答えるすず。
帳面は口実で、実はすずとデートしようと呼び出されたのだったが、大きな船が入港したばかりと見えて、映画館も混んでいたため映画は今度にしようと言う事になった。
すずは「小学校の同級生で水兵さんになった人がいるが、出会ったらどうしようかと思って…」と話し始めるが「普通に挨拶したらいいのでは」と周作に言われる。
周作はすずを嫁にもらった事は最良の選択だった、と言うような事を言い、すずは「今の生活が夢のように思えて、夢から覚めてしまったらつまらない」と言う。

周作はすずが痩せたように思える事を心配する。翌朝径子が「二人分」とご飯を山盛りにしてすずに出したため「おめでた?」と思ったが、夕飯時には「さっき二人分食べたんだからこれでいいよね」とおかゆを出されたので、「おめでた」はどうやら間違いだったらしい。

海軍に入った水原が、「風呂に入りに来た」とすずを尋ねてくる。
夕食をごちそうになるが、「(すずが役に立たなければ)つれて帰るから遠慮なく言ってくれ」と言い、すずに茶碗で頭を叩かれて「ええかげんにしろ」と言われてしまう。
周作は普段は見せないすずの水原との打ち解けた様子に驚いたような、何かを感じたような感じだった。
水原はすずが沸かした風呂に入る。
周作は父が今日はいないので自分が家長だが、家長として水原を家に泊める訳に行かないから、納屋で寝てくれという。そしてすずに「すずも強気になる時があるんだな…あんかを持って行ってやってくれ、つもる話もあるだろうし」と、納屋へ行かせ、鍵をかけて家からすずを閉め出してしまう。
すずと水原はいいムードになるが、すずは「こういう日を待っていた気がするが、水原がこんなに近くにいても(こんな状況を作った)周作に腹が立って仕方がない」と言い、二人は何もなく一夜を過ごしたようだった。
すずは水原がくれた鳥の羽で羽ペンを作り、水原は明け方海軍へ戻って行くが、これが最後の別れになった。

昭和20年2月、いよいよ終戦の年だが、兄の要一の戦死の知らせが届いたらしく、すずと周作は広島へ行く。
形見が入っている箱には石が入ってた。帰りの電車で、すずが水原との一件で周作に抗議したため、喧嘩になり、駅員に「その喧嘩は今しないとだめなの?」と言われてしまう。

3月になり空襲も激しくなって来て、晴美とすずが畑にいる時に空襲にあう。空襲という恐ろしい出来事なのに、空に上がる煙がすずには絵の具を跳ばした絵画のように見えて、「ああ今ここに絵の具があれば…」と思う。

このシーンは本当に水彩絵の具を空に散らしたように描かれていて、「水彩らしさ」がすごく良く表現されていた。すずが絵を描くシーン、特に絵の具を使って描く所は、描いている手順もすごく良く表現されている。

すずが突っ立って空襲を見ているところへ義父の円太郎が「陰に入って伏せろ」と慌てて覆い被さる。
空襲が終わっても円太郎は起き上がらず…倒れたかと思ったら、夜勤明けで陽気も良かったので眠ってしまっていたのだった。

4月になって近所の人の息子も出征することに。
5月の空襲では義父がいつまでたっても帰ってこない。
そうこうしえいるうちに周作が法務一等兵となり軍事教練を受けるため3ヶ月留守にすることになってしまう。
すずは「そんなに長い間いなくなったら、顔を忘れてしまう」と言うので「絵に描いたらどうだ?」と言われる。周作が眠っているところをすずはノートにスケッチしていたら、目を覚ました周作が「見せて」と言うがすずは「軍事機密」と言って見せなかった。
「周作が帰ってくるまで家を守って待ってる。この家にいないと周作さんを見つけられないかもしれない…」と言ってすずは周作を送り出す。
義姉の径子が義父が海軍病院に入院しているという情報を持って来て来た。径子は晴美をつれて下関にある亡き夫の実家へ行くと言い、切符を買いに行く間に晴美と義父の見舞いに行って来てくれと頼まれる。
見舞いに行くと義父の円太郎から戦艦大和が沈んだ事を聞かされる。

病院を出て径子の待つ駅へ向かう途中、空襲があり近くの防空壕へ入れてもらうすずと晴美。空襲が終わって表に出ると、前の家は空襲でやられてしまっており、その家の住人と思われる人が呆然と壊れた家を見つめていた。
すずはその人に「お水をもらってもいいですか?」と恐る恐る尋ねて水をもらいましたが、柄杓で水を飲ませてくれた後もその女の人は呆然と家を見つめ続けていた。
空襲でやられた家の横に壁が壊れて海が見えるところがあり、晴美は軍艦を見たいと言って、壊れた塀に向かうが、すずは以前に習った焼夷弾について思い出す。 焼夷弾は地面に落ちてもすぐには爆発せず、不発弾と見せかけて後で爆発する時限爆弾であることを。
すずは「晴美ちゃん危ない、こっちへ」と手を引っ張るがそこで焼夷弾が爆発してしまう。

すすが意識を取り戻した時、鈴の頭には包帯がまかれ、右手首の先はなくなっていた。
すずが晴美に作ってあげた血まみれの巾着と遺骨箱が置かれていて、径子がものすごい形相で「あんたがついていながら…!晴美を返して!人殺し」とすずをなじる。
すずは「ごめんなさい」と謝るしかなく、義母のサンが豆腐の配給の時間だから、と径子を配給を取りに行かせる。
サンはすずに「あんただけでも助かって良かったと思ってる」と言うが、すずは心の中で「そうかな」と思う。
家族に言われた事に対して、すずは何事にも否定的に考えるようになっていく。

北條家は難を逃れていたが、空集で焼夷弾が落ちて来て床が燃え始めた。
すずはしばらく呆然と見ていたが、周作との「家を守る」という約束を思い出し、布団をかぶせて必死で火を消す。
すずの様子にきがついたサンと円太郎も手伝い、何とか日は消す事ができた。
そこへ 訓練が中止になった、と周作が戻ってきて、すずは安心したのか気を失ってしまった。

すずはさらに否定的に物事を考えるようになり、家族が「すずが〜で良かった」と言ってくれても「なにがよかったのか、全然わからん」と思い。失った右手のことを考える。
この右手で絵を描いたり誰かの手を握ったり、いままで右手でして来た事を思う。
ほやんとしたすずだったのに、すずが壊れていくようだった。

ある日、妹のすみが見舞いにやってくる。純麺を土産にもらっておもわず声をあげるすずだったが、そこへ径子がお茶を持ってやってきたため、二人は気まずくお茶を飲んだ。
すみが帰るというので配給のついでに途中まで送って行きながら、すみが好きだったらしい将校の話などを聞くが、すみは「手をけがして家事もあまりできないだろうから、広島へ帰って来たらどうか」と言う。

ある時、空襲のさなかに庭に鷺が降り立ち、すずは空襲のない広島の方角へ逃がそうと、鷺を追いかける。「山を超えたら広島だ」と追いかけて鷺が飛び去ったのを見ながら往来に立ち尽くしていると(周りは銃撃されている状態)、そこへ周作が駆けつけて「死ぬ気か!」と側溝へ覆い被さる。
半分水につかりながらすずは周作に「広島に帰る」と告げた。
「戻ってこないのか?手の事を気にしてるのか?晴美の事か?わしはすずと暮らせて嬉しかった。あんたはちがうんか」と周作はすずに聞くが、すずは「聞こえん、聞こえんもん、広島へ帰る!」だだをこねるように言うばかり。
周作は覆い被さりながら「そうか、勝手にしろっ」と少しあきれたように言うが、空襲からすずを守るためにだきよせ、すずは周作の背中にてをまわした。

すずの病院に通う都合で、広島へ帰る日が延びた。すずが脱いだ服を径子が洗濯しようとしたので(広島へ帰るので洗濯ではなく荷造りするのだった)すずが止める。
径子は晴美を殺したとなじった事を詫び、すず一人の世話をするくらい何でもないし却って気がまぎれるのだから、すずが呉(北條家)が嫌になったのでないならここにいればいい、と言いながらすずの荷造りを手伝った。
すると、空の向こうがピカっと光った。 すずはトランクにしまった服を出し、径子に洗濯してくれと頼み、径子にもたれかかりながら「やっぱりここにいらしてもらえますか」と言う。
径子は寄りかかってきたすずを「暑苦しいから離れ」と言われる。

ものすごい音(と少し振動)がした。 原爆が落とされたのだ。
ピカドンという言葉は、若い人は知らないんでしょうかね… しばらくすると、大きなキノコ雲があがった。すずは晴美と見たカナトコ雲を思い出す。

広島に新型爆弾が落とされたという情報が流れ、すずの実家が大丈夫なのか皆で心配していたが、すずは近所の人たちと公民館のようなところでわらじを作る。
径子のわらじはひどい形に出来、すずは片手が使えないので口を使いながらも径子よりも上手にわらじを作りながら「片手じゃうまくできなくて歯がゆい」と言ったため経子に「イヤミかね」と言われてしまう。
わらじを作ってくれと言った知多さんに何のために作るのか聞いたら、広島へ持って行くという。新型爆弾で道路がとけていたら靴も下駄も訳に立たないだろうから、と言われ、すずは自分も連れて行ってほしいと頼むが断られる。
いきなりそこに置いてあった裁ちバサミで三つ編みを切り落とし、「これなら手もかからないし迷惑かけないから連れて行ってほしい」と頼み込むが、けが人は連れて行けない、しかし消息くらいは調べられるかもしれないからと言われた。

翌日の朝、広島から歩いて来たらしい人が、道ばたで座ったまま死んでいた、と知多さんと近所の人が話していた。顔も服もベロベロでどこの誰かもわからない状態で、病院から先生に来てもらったがだめだったということだった。
すずには黙っていよう、ということになったが、すずは後ろで聞いてしまっていたのだった。
すずは家族の名前を告げて安否を調べてもらうように頼んだ。

B29が降伏を呼びかけるビラを撒き、それを拾ったすずはくしゃくしゃに丸める。 周作が帰って来て、ビラは拾ったら届けないとまた怒られる、とすずに言うが、どうせ燃やすだけだから、もんでお落とし紙にした方が有効活用できる、と言われ、そうれもそうだが当分便所は人に貸せない…と周作は言う。

和式のトイレ自体もあまり見なくなった昨今、「ぼとん便所」を知らない人もいるだろうなぁ…工事現場にある仮設トイレはそういうトイレだけど、そんなものに入る機会はそうそうないもんね。

この日は8月15日、正午から玉音放送があり、ラジオの前で皆で聞く。
天皇陛下の声は、ニュース映像等で聞く声とは少し違った気がした。 「つまり、戦争は終わったってことだ」とみんなが電球の覆いを外したりする中、すずは一人「最後の一人まで戦うんじゃなかったのか?ここにはまだ5人もいるのに!まだ左手も両足もの香っているのに!納得できん!」と飛び出して行った。
径子が庭の隅で「晴美…!」と泣いているのを見ると、すずは畑に向かった。
すずは「(新型爆弾と言う)暴力で従われされたのか。これがこの国の正体なのか。だったら知らないまま死にたかった」と考える。
手がすずの頭を撫でるが、それはすずの失った右手だったのかも。

すずと知多さんとの会話で、妹のすみが生きていたらしい事を知る。
進駐軍がやってきて、子ども達がチョコレートをねだって群がっていた。
闇市で径子と会い、何だか良くわからない炊き出しをもらうが、中にはゴミのようなものも入っていた。
二人ですするが「うまい・・・占領軍の残飯だそうだが、こんなに美味しいとは」というような話をする。
すずが子どもに見えたのか、米兵はすずにチョコレートをくれた。

翌日、近所の刈谷さんと食料を買いに行き、着物などと交換して食べ物を手に入れる。
刈谷さんは男物の服をかなり渡してしまっていたので「いいんですか?」とすずが聞くと「いいんだ」と言い、以前に行き倒れいていた人が実は自分の息子だったらしいことが、後で届いた息子からの手紙でわかった、自分の息子だとは気がつかなかったと教えてくれた。
すずは晴美が吹き飛ばされた場所にチョコレートを備えた。刈谷さんも手を合わせてくれた。

翌年の1月、すずは妹のすみの見舞いで広島へ行く。祖母の家は無事ですみはそこに身をよせていた。
すみの話だと8月6日はお祭りの準備で、母は町にお使いに行ったそうだ。何日も父とすみとで母親を探しまわったが結局見つからなかった。
10月になって父が倒れてすぐに亡くなってしまい、学校でまとめて火葬してもらったということだった。
すみの腕には紫斑が現れていて、被爆した事が分かる。

すずは周作との待ち合わせの場所である、「原爆ドーム」へとやってくるが、その間にもいろんな人から「さちこさん?」「きよこさん?」と声をかけられる。みんな、行方不明の身内を捜しているのだ。
周作が来て、再就職先も決まって何とかなりそうだ、と言う。
歩きながら橋の上に来て「すずと自分が初めて会ったのはこの場所だ」と教えてくれた。「町が変わってもわしにはすずさんがいつでもわかる。ここにほくろがあるから」という周作にすずは「この世界の片隅で自分をみつけてくれてありがとう」と言うと、その時にあの子どもの頃に見た化け物が、同じように篭を背負って通りかかった。
その顔はワニみたいだった… このカットの怪物は、すずには見えていなかったのかもしれません。
なので、すずは周作との出会いを知らないままだったのかも。

夜になり、汽車を待っていると女の子が近づいて来た。 彼女の回想で、母親と一緒に被爆して結局母親は死んでしまい、しばらく亡骸のそばにいたがウジが湧いてどうしようもなくなったため、一人になったようだった。
その女の子はなぜかすずになついて来て離れようとしない。
周作は広島で仕事が見つかったようで、すみやすずの母キセノのこともあるし、すずに広島で所帯を持つか?と聞かれるが、自分が選んだのは呉なので呉から通う、と言う。

女の子はすずにしがみついて来たので、すずは「広島でよく生きていてくれたね」と女の子に語りかける。
女の子の母親も手がなかったので、女の子は自分の母親にすずをかさねたようだった。
結局、二人は女の子を呉へ連れて帰る。 北條家の人たちはその子を受け入れてくれたが、ものすごいシラミがついてたため、DDTの白い粉を振りかけられることになった。径子は晴美の服を出して来て女の子に着せる。

ここからエンドロールになるが、女の子とすず、径子のその後の様子が描かれる。 径子は女の子とすずにお揃いで洋服を作ってあげたり、女の子が少しずつ成長して行き、最後にクラウド・ファンディングに出資してくれた人の名前がずらーーーーーーっと… さいごにすずの右手が「バイバイ」というように手を振って映画は終わった。

「ユーリ!!! on ICE」で出資募るプロダクションって大丈夫なの?というのを見かけたが、これか…と思った。

評価:1f 


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